青柳、秋山、伊藤、西、ガンケル…残るは1枠
評価急上昇の新星と、復活を懸ける豪腕のマッチレースの様相だ。
阪神タイガースの沖縄・宜野座キャンプは最終クールに入った。矢野燿大監督が「レギュラーは近本だけ」と宣言し、激しいポジション争いが注目される中、ローテーションを巡るサバイバルも重要なトピックの1つ。
とはいえ、12球団屈指の陣容を誇る先発陣は青柳晃洋、秋山拓巳、伊藤将司と昨季の2桁勝利トリオが順調に調整を進め、西勇輝、ジョー・ガンケルも故障などアクシデントもなく、間もなく対外試合登板を果たす。
6人制を敷くなら実質、残るは1枠。後退の許されない戦いで存在感を示しているのが10年目を迎えた藤浪晋太郎だ。ここ2年で経験した中継ぎではなく、あえて先発1本に絞って不退転の決意で臨んでいる1年。5日の紅白戦で早速、今春初実戦のマウンドに上がると近年は配球に加えていなかったカーブを披露して“変身”をアピール。
梅野の突然のサインだったというが「バッターの頭にあるだけでも違ってくる」と新境地を見せた。直球の最速もすでに159㌔を計測するなど、背水の背番号19に「調整」の2文字はない。
ワンシーム、カーブ…感じる投球の「幅」
19日の楽天との練習試合では、1月に合同自主トレを行った巨人・菅野智之から伝授されたワンシームも試投。カットボール一辺倒だったスタイルからの脱却が復活への第一歩になるとして、変化球の精度向上に時間を割いている。
「結果を出さないといけないのはもちろんありますけど、良くて当たり前というか。この時期に良かったからといって先発ローテに入れるわけではないので」。浮き沈みを経てきた27歳は冷静だ。
近年、春先でもストレート、カットボール主体の投球を強いられていた姿を見ると、今年はカーブ、ワンシームだけでなく、カットボールとの投げ分けを目指すスライダーも駆使しようとしている。
「直球を生かすのも変化球ですし、変化球を生かすのも直球なので。もともと持ち球も多彩なほうなので、使っていければ」。豪腕から変幻へのシフトチェンジで結果を積み重ねていく。
強気の攻めで頭角表した桐敷拓馬
そんな藤浪のライバルになりそうなのがドラフト3位ルーキー、桐敷拓馬だ。
鮮烈な印象を残したのは15日に登板したシート打撃。主力野手と対戦し、昨季22本塁打のジェフリー・マルテを内角へのスライダーで三ゴロに仕留め、バットをへし折った。近本光司には四球を与えたものの打者5人に無安打。多彩な変化球を散りばめ、信条としている内角攻めをいきなり体現し、実戦向きであることを示した。
さらに20日の中日戦は左打者3人とのマッチアップで最速149㌔を計測したツーシームを武器にまたしても0封。万能タイプで中継ぎでの起用も考えられていたが、金村投手コーチは「次はイニングを伸ばしたい。先発かなと思っている」と先発争いへの参戦を明言した。
「自分の中では先発でも中継ぎでもどちらでも良いという感じなので。どちらでも自分は貢献するという思いがあるので」。即戦力左腕は、地に足を着けて腕を振っていくことを誓う。
他の先発陣がアピールに欠けるという理由もあるが、投手のタイプも、キャリアも違う2人の争いは、3月に入っても続いていく。最強先発陣の最後のワンピースになるのはどちらか。
《ライタープロフィール》
チャリコ遠藤 1985年4月9日生まれの36歳。本名は遠藤礼。関西大学から2008年にスポーツニッポン新聞社入社。2010年から阪神タイガース担当で2018年から「チャリコ遠藤」のアカウント名でTwitterで積極的に情報を発信中。フォロワーは2万8000人。趣味は海釣り。
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