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ソフトバンク・松田宣浩にかかるミスター超えの期待 右打スラッガーながら現役最多三塁打

2022 3/5 11:00林龍也
福岡ソフトバンクホークスの松田宣浩,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

右打のスラッガーながら現役最多三塁打をマーク

昨シーズン、通算300本塁打を達成し、1000打点まであと16、2000安打まで189としているソフトバンクの熱男こと松田宣浩。通算長打率.467をマークするなど、強打者としてのイメージが強い選手だ。

一方で通算盗塁は134を数え、さらに66三塁打は現役最多。強打者でありながら、走塁にも積極的な一面を持つ「走れるスラッガー」だ。今回は現役・歴代の通算三塁打数上位の選手たちと松田を、長打力などの面から比較・考察してみたい。

現役の三塁打ランキング上位20人は以下の通り。

通算三塁打数ランキング(現役選手),ⒸSPAIA


ひと目見ると、松田以外のほとんどの選手が俊足巧打タイプの選手ということが分かる。柳田悠岐(ソフトバンク)はやや別格な存在だが、あとは中距離打者や俊足巧打タイプが多い。

本塁打は301本の松田がトップで、長打率でも松田を上回っているのは柳田、福留孝介(中日)、丸佳浩(巨人)の3人のみ。1495三振はやはりトップで、打率、出塁率は下から数えた方が早い。

強打者らしい数字が並ぶ松田だが、特筆すべきは、ほとんどが左打者の中、右打者である松田がトップを走っていることだ。左打者の方が一塁への距離が短く、さらにスイングから走り出すまでがスムーズなため、一般的に三塁打は左打者の方が多い。実際、ここ10年の最多三塁打はほとんどが左打者だ。

右打者でも荻野貴司(ロッテ)のように上位に食い込んでくることはあるが、荻野は足を武器とする選手だ。平田もパワフルなスイングが目立つが、通算成績を見るとどちらかと言うと中距離打者タイプと言える。荻野のような選手がひしめく中、盗塁数でも平均以上をマークしている松田の積極走塁が際立つ。

ちなみに、福留、青木宣親(ヤクルト)はMLB時代、福留が13本、青木が22本の三塁打を放っているが、それを加えても松田が上回っている。

ミスター超えまであと9三塁打

続いて歴代通算での三塁打数ランキングを見ていこう。

歴代通算三塁打数ランキング,ⒸSPAIA


松田は現在12位タイにつけており、松田より上位にいるのは全て1980年代以前にプレーしていた往年の名選手たちだ。上位21人の中でも2000年代以降にプレーしていたのは松田を含め4人のみ。

シーズン三塁打記録でも、近年では2018年の上林誠知(ソフトバンク)が14本で4位タイ、2014年の西川遥輝が13本で6位タイにランクインしている以外は、ほとんどが1950年代の選手だ。

当時の記録を見ると、1球団でシーズン30~40三塁打をマークすることがざらにあった。対して現代では概ね20前後。野球そのものが変化し、現代の野球では三塁打は珍しいものとなっているのだ。そんな中、松田は自らの積極走塁で上位に食い込んできた。

21人のうち本塁打数で松田を上回るのは504本塁打の張本勲と、444本塁打の長嶋茂雄のみ。長打率でも長嶋ら4人だけだ。このクラスになると長打力がない選手というのも少ないのだが、その中でも松田の長打力は優れている。

その一方、断トツの1495三振を記録し、出塁率.319も最下位と、確実性では他の選手よりやや劣っているようだ。長打力を発揮するためには、必要な犠牲だったのかもしれない。

9人いる右打者(両打の松井稼頭央も含む)のうち三塁打、本塁打で松田を上回るのは長嶋のみ。その長嶋の記録まであと8三塁打としており、充分射程圏内だ。同じ右打のスラッガーで、同じ三塁手。ぜひとも「ミスター超え」を果たして欲しいところだ。

2000年代最強の「走れるスラッガー」

三塁打が多いということは全力疾走を怠らないということなのだが、実は松田は併殺打も多い。153併殺打は長嶋の257に次ぐ数字で、前述の現役三塁打ランキング内の選手の中でも最多の数字だ(現役全体では5番目)。

外野を抜けたときは積極的に次の塁を狙うが、内野ゴロのときはそうでもないのかもしれない。右投右打のスラッガーなら自然と多くなってしまうものではあるのだが、レギュラー定着以降は毎年のように二桁併殺打を記録しており、三塁打の多さからするとギャップを感じる数字だ。

松田は現在、現役2位の301本塁打、現役16位の134盗塁をマークしている。盗塁数トップ20の中で松田より本塁打が多い選手はおらず、三塁打でも現役トップ。2000年代以降の野球界では最強の「走れるスラッガー」と言うことができそうだ。

長きに渡って鷹のホットコーナーを守り続けてきた松田だが、昨シーズンは7年ぶりに規定打席に到達できず、オフには大幅減俸の憂き目に遭った。チームでは若手のリチャードが台頭するなど、プロ野球選手としての岐路に立たされているとも言える状況だ。しかしトレードマークの元気はまだまだ健在。これからも果敢に三塁を狙い、絶叫する姿を見せ続けて欲しい。

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