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日本ハム新庄剛志ビッグボスは天性の人たらし?目を見張る「営業力」

2022 2/20 06:00岩崎正範
日本ハムの新庄剛志監督,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

武井壮ら外部関係者が次々に名護入り

日本ハムの“BIG BOSS”こと新庄剛志監督(50)が今春キャンプの話題をこれでもか、と独占している。

キャンプイン初日からど派手な高級3輪自動車で球場入りするなど目立ちたがり屋ぶりは何ら変わらず。その一挙手一投足に連日注目が集まっているが、今回新監督になって一番見逃せないのは「人たらし」とも取れるその行動力、フットワークの“超軽さ”だ。

初めて指揮する沖縄・名護の春季キャンプで新庄監督は“外部関係者”の協力、指導を求めまくっている。しかも、どれも一流どころ…。ざっと名前を挙げていこう。

陸上十種競技元日本王者でタレントの武井壮(48)、セ・リーグ記録の5年連続盗塁王に輝いた阪神OBの赤星憲広氏(45)、“火の玉ストレート”の名ストッパーで阪神OBの藤川球児氏(41)、“孤高の天才打者”と称された広島OBの前田智徳氏(50)、そして巨人の名将・原辰徳監督(63)、同じく今季から指揮を執る“ミスタードラゴンズ”こと立浪和義新監督(52)まで…と並々ならぬ面々に「ご指導ご鞭撻を」と頭を下げてきたのだ。

ギャラが発生している武井氏、赤星氏の「特別講習」はともかくとして10日、テレビ局の取材で訪れた藤川氏には即席の「臨時コーチ」になってもらい、伸び悩んでいる4年目右腕・吉田輝星(21)ら投手陣の徹底指導をお願い。

新庄監督は「すばらしい1日になった。藤川君の指導で(吉田が)めっちゃ変わった!前に見た投球とは球筋が全く違う。一瞬で!すごい!球児君みたいに『真っすぐで行きますよ』といって空振りをとるような球を投げなさいと(吉田に)伝えました」と大興奮だった。

敵将の原辰徳監督や立浪和義監督にも選手の指導を依頼

これで味をしめたのか、新庄監督は翌11日も自らのSNSなどネットワークを駆使し、取材にやってきた同級生の前田氏を打撃ケージ裏に招いて「臨時打撃講座」を開講。助言を受けた6年目の石井一成内野手(27)が練習試合で即結果を出すと「やはり天才打者の言葉は違う。(石井の)バットの出方が変わってきたから」とご満悦だった。

そして傑作だったのは15日、新庄監督は練習試合で対面した巨人の原監督に何と自身がプロデュースした香水をプレゼント。打撃ケージ裏にある通称「原タワー」に招かれ、約1時間対談することに成功した。

原監督から「好きにやりなさい。何かあったらサポートする」とありがたい言葉を頂戴した新庄監督は試合後に自身のインスタグラムを更新。「今日の試合で教えてもらったことを選手に伝えたらすぐに結果を出してくれました」など感謝の意を投稿した。こんな指揮官は世界でただ一人だろう。

翌16日には新庄監督が「僕が憧れてきた方」と尊敬していた中日の立浪監督に「僕は左打者のことがわかりませんから」と“悩める大砲”清宮幸太郎内野手(22)への「特別講座」を直接依頼した。敵将に自軍の打者の面倒を公然の場で見てもらおうとは前代未聞。だが、それができるのも新庄監督をおいて他にはいない。

報道陣には連日「ビックボスランチ」

言葉は悪いがまさしく、これぞ新庄流の「人たらし」…。何ら物怖じすることなく、お願いするときは単刀直入、無邪気な笑顔で、ヨイショすることも忘れない。選手時代の新庄監督は自分の派手な言動ばかりが目立っていたが、指揮官となった今回は違う。選手の成長を懸命に思い、外部にも頭を下げまくって「協力」を要請。変われば変わるものだ。

この手の話となると“ジジ殺し”に長けていた故・星野仙一氏が有名だが、新庄監督も負けてはいない。オマケながら我々メディアには連日「ビックボスランチ」として特製カレー、ステーキ丼など食事もふるまい、その度に「味はどうですか?何かリクエストがあったらいってくださいね」との心使いも…。

この辺はかつての“闘将”とよく似ている。本人に聞かないとわからないが、バリでの放蕩生活など波乱に満ちた人生経験が今の新庄監督に変えたのか、と思う。

そんな涙ぐましい?新庄監督を選手時代からよく知る阪神OBの川尻哲郎氏(53)は「外見で判断されがちだけど元々、新庄は誰からも愛されるタイプ。何をやっても嫌味がないから、あの小うるさい野村監督にも好かれていたんです。まだまだ盛り上げていってほしい」とエール。

合宿所「虎風荘」の“鬼寮長”だった恩師の梅本正之氏(85)は「ここまでは満点。あの新庄が練習で自らトンボをかけてるなんて考えられんことで涙が出るくらいうれしい。報道陣に食事をふるまうとか、すみからすみまで…。人間的にも相当成長してくれた」と感動したほどだ。

いずれはシーズンが始まり本当の評価はこれからとなるが、稀代の「人たらし」と化した新庄監督。今後も目が離せないのは当然だ。

《ライタープロフィール》
岩崎正範(いわさき・まさのり)京都生まれ。1992年から2021年6月まで東京スポーツ新聞社に勤務。プロ野球の阪神タイガースを中心に読売ジャイアンツ、オリックスバファローズ、ニューヨークヤンキースなどを取材。現在はフリーライター。

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