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ノーマークの新人時代から200勝&野球殿堂入り、山本昌の高齢達成記録を振り返る

2022 2/13 06:00広尾晃
ナゴヤドーム
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ⒸTK Kurikawa/Shutterstock.com

NPB史上最高齢での200勝

今年度の野球殿堂入り表彰では、プレイヤー表彰部門で山本昌と、現ヤクルト監督の高津臣吾の両投手が選ばれた。山本昌は、現時点でNPB単独では「最後の200勝投手」だ。

それだけでなく、さまざまな高齢での達成記録を持っている。まずは200勝到達の年齢。到達した年齢、高齢順に5傑。節目の勝利数を達成したシーズンの年齢も紹介する。

達成時年齢が高齢の200勝投手5傑,ⒸSPAIA


2008年8月4日に200勝を達成した山本昌が最高齢。続いて2004年8月17日に達成した工藤公康となる。この2人はそれぞれ23人目、24人目の達成者で、山本昌以降、200勝達成者はいないため、直近の2人が高齢記録を更新したことになる。

若林忠志、藤本英雄は戦前からの投手。戦争による中断などもあって、40歳近くでの200勝となった。村田兆治は1983年、33歳でトミー・ジョン手術を受けて2年近くを棒に振ったこともあり、39歳5か月で200勝に到達した。

山本昌は1990年代以降に活躍した。この時期には先発ローテーションが確立され、先発は毎年、28試合前後しか登板しなくなった。また救援との掛け持ちもなくなったのでシーズン勝利数は減少し、200勝まで時間がかかった。山本昌は3度最多勝に輝いているが20勝は記録していない。工藤公康も16勝がキャリアハイだ。

初勝利は入団5年目と遅咲き

山本昌はまれにみる「遅咲き」だった。1983年、日大藤沢高からドラフト5位で中日に入団したが、球速は130㎞/hそこそこ。フォームも不格好で、チーム首脳は「とても使えたものではない」と判断。2年間はファーム暮らし、3年目に一軍昇格するがひじを痛め、そこから2年間は無勝利だった。

1988年にはドジャースのマイナー、ベロビーチに野球留学。ここでアイク生原氏と出会って、投球術を会得し、帰国後初勝利。入団5年目、23歳になっていた。この年5勝。この時点で、ドラフト同期で同じく高卒で入団した西武の渡辺久信はすでに45勝を挙げていた。

元号が平成となった1989年以降、山本は安定した投球でローテーションを長く維持。最多勝3回、防御率1位を1回、最多奪三振を1回獲得した。

ただ、スタートが遅かったために100勝は32歳のシーズン、150勝は37歳のシーズン。2003年、39歳のシーズンを終えた時点では173勝であり、200勝、名球会は難しいだろうと思われた。

しかし、山本昌はここから超人的な活躍をする。

40歳のシーズン以降で46勝

40歳シーズン以降に、10勝以上を挙げた投手を下表にまとめた。

40歳シーズン以降に10勝以上記録した投手,ⒸSPAIA


山本昌が46勝で1位、続いて工藤公康が40勝。この2人は40歳を過ぎてからしぶとく活躍し続け、200勝に到達したと言える。

上位には、下柳剛、黒田博樹、三浦大輔など平成以降に活躍した投手の名前が並ぶ。近年は、科学的なトレーニング方法や、治療法が進化。高齢になった投手でも適切なケアをすれば、現役生活を永らえることができるようにはなっている。

ただ山本昌は、その中でも群を抜いている。2006年9月16日の阪神戦でノーヒットノーランを記録しているが、このとき41歳1か月5日、史上最高齢での記録達成だった。

実働期間は1986年から2015年、29シーズンは現オリックス監督の中嶋聡と並び史上最長。一軍の試合に出ていなかった期間も含めれば、現役生活は1984年から2015年の32シーズンに及ぶ。

また、2013年8月28日のヤクルト戦では通算134本目の安打を打ったが、このとき48歳0か月。これは最高齢での安打記録だった。50歳まで現役選手だったのも、山本昌ただ一人だ。

山本昌と工藤公康は40歳近くになっても鍛錬を怠らず、気力も充実させて戦力として踏みとどまり、200勝を達成するとともに一線級投手としてチームに貢献したのだ。

山本昌の活躍は、現役最多勝の177勝で、200勝を目指すヤクルト石川雅規を大いに勇気づけているだろう。山本昌、工藤公康、そして石川はそろって左腕の先発投手だ。42歳になった石川雅規だが、今季も勝利数を積み重ねて、山本昌の記録に挑戦してほしいものだ。

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