田中将大は23試合中12試合が「味方の援護1点以下」
田中将大は2021年、年俸9億円(推定)で楽天に復帰した。24連勝した2013年の再現が期待されたが、現実は23試合4勝9敗に終わった。
6月12日の阪神戦で佐藤輝明に内角低めスライダーをライトスタンドに運ばれた時は力の衰えを心配されたが、必ずしもそうとは言えない。それは数字が証明している。
なんと先発23試合中「味方の援護が1点以下」の試合が12試合もあった。これではプロ入り初の負け越しも仕方ないだろう。
「試合を作る」指標としてQS(クオリティ・スタート=先発6イニング以上を自責点3以内に抑えること)があるが、21年パ・リーグ1位が山本由伸(オリックス)で26試合中23試合、QS率88.5%(18勝5敗)、2位上沢直之(日本ハム)は24試合中21試合で87.5%(12勝6敗)だった。
田中の23試合中17試合のQS率73.9%(4勝9敗)は、10勝9敗の伊藤大海(日本ハム)に並ぶ3位タイと上々の数字だったのだ。
与四球率2.00以内は「針の穴を通すコントロール」
もう一つ「与四球率」(9イニング平均で何個四球を与えたか)も「試合を作る」意味で投手を評価する重要な指標となっている。
これが2.00個以内だと「抜群のコントロール」と言っても差し支えないだろう。「精密機械」と呼ばれた往年の小山正明(東京ほか)は1.80個、「針の穴を通すコントロール」」と言われた稲尾和久(西鉄)も1.80個だった。
硬式球の直径は約7.4センチ。そのボール半個分での勝負になるわけだ。NPB通算勝利数上位にランキングされる名投手の与四球率は以下の通り。
・400勝 金田正一(国鉄ほか)2.94個
・350勝 米田哲也(阪急ほか)2.60個
・320勝 小山正明(東京ほか)1.80個
・317勝 鈴木啓示(近鉄) 2.20個
・310勝 別所毅彦(巨人ほか)2.49個
・303勝 スタルヒン(巨人ほか)2.63個
・284勝 山田久志(阪急) 2.12個
・276勝 稲尾和久(西鉄) 1.80個
現役最多の日米通算181勝90敗の田中は今季1.68個、NPB通算177勝176敗の石川雅規(ヤクルト)は今季1.76個と、さすがの数字を残している。
田中はプロ通算でも1.83個、石川は同1.81個だ。特に大卒20年目の石川は、ストレートの平均球速が132.7キロでも日本シリーズで71年ぶりの「40代勝利」をマークした。投手にコントロールが大切なことを再認識させる投球だった。
ヤクルト奥川恭伸は驚異の与四球率0.86
2021年の規定投球回以上で2.00個以内は、セ・リーグでは大野雄大1.63個(中日=7勝11敗)と大瀬良大地1.90個(広島=10勝5敗)。パ・リーグでは加藤貴之1.26個(日本ハム=6勝7敗)、田中将大1.68個(楽天=4勝9敗)、山本由伸1.86個(オリックス=18勝5敗)の計5人しかいない。
一方、今井達也(西武=8勝8敗)は与四球率5.63で制球難を露呈した。ただ、今井が8勝8敗と五分の星だったのに対し、上記の大野、田中、加藤の3人は負け越し。個人的な勝ち負けに関係なく「試合を作る」という点ではきちんと評価されるべきだろう。ちなみに大瀬良はQS率も87.0%と優秀な数字を残している。
日本一に輝いたヤクルトの奥川恭伸(ヤクルト)は規定投球回には達しなかったものの、驚異の与四球率0.86個で9勝4敗だった。過去には日米通算134勝93敗128セーブ104ホールドの上原浩治(巨人ほか)が、特筆ものの1.26個をマークしている。投手にとってコントロールが重要なことは間違いない。
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