1億円超えの秋山拓巳と明暗くっきり
厳しい現実にも、うつむくことはなかった。
阪神・藤浪晋太郎が8日、契約更改に臨んだ。プロ9年目の今季は自身初の開幕投手を務めて1年をスタートさせたが、ローテーションに定着できず4月に2軍降格。6月には中継ぎで再昇格を果たしたものの、ブルペンでも好投を続けることはできなかった。
優勝争いを繰り広げた終盤も力になることはできず、21試合に登板して3勝3敗、防御率5.21。1100万円ダウンの来季年俸4900万円(推定)となり、これで6年連続の減俸となった。
「もちろん悔しいですし、数字を出せない以上、プロ野球選手でダウンというか給料が下がるのは当然なことなので。それに対してクソって思いもありますし、取り返してやるって気持ちはある。やってやろうという気持ちではいます」
1年目から3年連続での2桁勝利に始まり、近年続いている長い不振。プロである以上、残った数字が金額に反映されてしまうだけに“乱高下”の年俸変動は右腕の置かれた立場を残酷に示す。
直後に契約更改した秋山拓巳は、2年連続の10勝クリアが評価されて来季13年目にして初の年俸1億円に到達。同じ会見場で言葉を発した2人のコントラストは鮮明だった。
「エゴ」繰り返しこだわる先発
ただ藤浪に漂うのは悲壮感だけではない。追い込まれたからこそ、開き直って強い言葉で逆襲を宣言する場面もあった。「エゴ」という言葉を繰り返し、自身がこだわる“場所”を明確にした。
「完全な自分のエゴで先発やりたいというのもありますし、そのエゴを通せない実力なら中継ぎでも大した成績を残せないと思ってるので。自分のエゴで先発をやります、と。それを1年間通せるくらいの力をつけられるように頑張りたい。“自分は先発だ”という意識は強い」
リーグ屈指の陣容を誇るローテに食い込むことは簡単でない。それでも、1つあるかないかの枠を奪い取る戦いで体現することはシンプルだ。
「圧倒的なパフォーマンスをしたり、先発で藤浪を使いたいと言われるようにしないといけない」。最速162キロの直球に150キロに迫るスプリット、そして無尽蔵のスタミナ…背番号19だけが持つストロングポイントは、数多くある。
「自分の一番の強みってタフネス、体の強さ。こればっかりは親に感謝するしかないんですけど。そこが一番の売り。先発やっていく上で、球数を少なくというのもありますし無駄なボール、余計な四球がやはり自分の課題。しっかり改善できるようにしたい」
強みを出しながら、浮き彫りになっている課題をいかに克服していくか。競争にさらされる身だけに、来春キャンプの序盤から結果が求められ、時間もそう多くはない。
勝負のプロ10年目
来季は節目の10年目。4月で28歳になるシーズンを前に「自分もアラサーなんで(笑)。うかうかしてる訳ではないですけど、もういい歳なので。しっかり覚悟を持って臨みたい」とうなずいた。
このままの降下か、鮮やかな昇華か。藤浪晋太郎のキャリアにとって分岐点となる1年になりそうだ。
《ライタープロフィール》
チャリコ遠藤 1985年4月9日生まれの36歳。本名は遠藤礼。関西大学から2008年にスポーツニッポン新聞社入社。2010年から阪神タイガース担当で2018年から「チャリコ遠藤」のアカウント名でTwitterで積極的に情報を発信中。フォロワーは2万7000人。趣味は海釣り。
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