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2021年の日本人選手平均年俸は4174万円
この時期になると、ファンの興味を引くのがマネー闘争である。
日本球界の2021年最高年俸は田中将大（楽天）の9億円（推定）。2位が菅野智之の8億円（いずれも推定）。日本人選手の2021年平均年俸は4174万円（日本プロ野球選手会調べ）。平均年俸にしても一般庶民とひとケタ違うので、ピンとこない。
テレビニュースでは大幅アップを果たした選手が満面の笑みでポーズをとっているが、その実、悲喜こもごもの契約更改交渉が繰り広げられているのである。
1軍最低保証年俸は1600万円
まず、育成選手の最低保証年俸は240万円、2軍選手は440万円。1軍選手は1600万円。育成選手と2軍選手に関しては、契約更改交渉というよりも、2軍マネージャーが独身寮などで「来年はこれで契約するからサインしてください」という「伝達事項」の性格が強い。
育成選手は月額20万円なので、不足分を親から仕送りしてもらっている選手もいた。そこまでしてプロのユニフォームを着たい選手もいるのだ。
「1軍半」で年俸1000万円の選手が10日間一軍登録された場合、（1600万円－1000万円）÷150日（年間一軍登録日数）×10日＝40万円が加算される。これらの明細表は、納会（球団の忘年会）で配布される。
余談だが、グッズ販売などの肖像権料分配の明細も配布されるので、どの選手がどれだけ売れたか分かる。ちょっとした小遣いになるが、少ない選手には明細表を渡すのが気の毒になる。
選手のグチ「100万円をキャッシュで返した」
ユニフォームが普段着のプロ野球選手が、契約更改交渉のためにスーツ姿で球団事務所に年に1回顔を出す。
本社から子会社・球団への出向で野球にまったく興味がない経理社員は、「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ。どちら様ですか？」と尋ねてくるので、1軍半の選手は「オレって顔が知られていないな」と、大きなショックを隠せないでいるのが見ていて笑える。
「球団代表、査定担当、経理部長の3人VS選手1人。3人に言いくるめられて交渉どころではない」
「そんな大幅ダウン？オレってクビってこと？結局現状維持だったんだけど、言われるだけ言われてこちらにも意地があるから2回目の交渉で100万円をキャッシュで返した」
選手からそんなグチをよく聞いたので、「君の成績の素晴らしいところはここだから、ここをアピールすると年俸がアップするよ」とアドバイスしている新聞記者もいた。
1992年末に古田敦也（ヤクルト）が代理人交渉を初めて要望し、2000年末から弁護士の代理人同席が認められた。しかし、そういう代理人業を商売にするブローカーが現れないように、1選手1弁護士となっている。
選手の性格が表れる契約更改交渉
交渉は「今年は自分なりにどうだった？」というような世間話などから始まって、そのシーズンの成績の確認、翌年度の年俸提示という流れになる。
球団や年度によって、「全体でこれだけ減らさなくてはいけない」というケースと、意外にアバウトなケースがある。
「希望額が3000万円。提示額が2500万円。自分の背番号が28なので、中間の2800万円にしていただけませんか。来年のモチベーションが上がりますと言ったら、そうなった」
「同じくらいの成績の他球団の選手の契約更改が終わってから、それを参考に交渉に臨む。一度保留すれば300万円上がるのなら、その方がいい」
300万円と簡単に言うが、球団職員は1枚3000円のチケットを1000枚売らなくてはならない。この考えはいただけない。
「寝坊して契約更改に遅刻しました。交通渋滞に巻き込まれたと査定担当には話しました」
その選手以降の契約更改はリスケジュールとなった。遅刻の常習者。現・某球団の監督だが、当時の彼を知る者は、現在監督として立派なコメントを出すことを苦々しく思っている。
現在は理論派のコーチで鳴らしているが、現役時代に激情型だった選手は、交渉がまとまらず、交渉場所の部屋の壁にキックを見舞った。ベニヤ版の壁には大きな穴があき、年俸はアップしたが、結構な額の修理代を弁償となった。
こんなことがあるから、テレビで笑顔を映すどころではない。主力選手はいいイメージを保つためにも事前に「下交渉」が設けられる。
ほかにも経理部長が言っていた。「なぜ、あの外国人選手には振込口座が３つもあるんだろう」。1つは奥さん、1つは自分のヘソクリ。それは分かる。もう1つは……。ちなみに選手の年俸は、12月・1月を含め、12分割で銀行に振り込まれる。
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