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ヤクルトはセ唯一平均得点とOPSが良化 投手陣はゾーン勝負が奏功【数字で見るチーム力の変化】

2021 12/10 11:00勝田聡
東京ヤクルトスワローズ監督の高津臣吾,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

チームOPS.731はリーグトップ

2021年のヤクルトは神戸の地で20年ぶりの日本一に輝いた。2年連続最下位、さらには開幕カードで3連敗を喫したものの、高津臣吾監督が見事にチームを立て直した。

この大躍進には複数の要因がある。特に、オスナとサンタナの2人の加入により打線に厚みが増したことと、奥川恭伸と高橋奎二ら若い先発投手たちの台頭は大きかっただろう。では、昨年と比べてチームのスタッツはどのように変化したのだろうか。打撃スタッツ、投手スタッツを昨シーズンと比較してみた。

ヤクルト打撃スタッツ比較,ⒸSPAIA


得点力は大きく上がった。今シーズンは昨シーズンと比べて試合数が23試合増えているため、総得点で単純比較はできない。それでも1試合平均得点は、3.9点から4.37点と0.47点も増加している。昨シーズンから平均得点が増加したのは、セ・リーグでは唯一、ヤクルトだけだった。

1試合の平均で見ると、安打と本塁打もそれぞれ上昇しているが、意外にも本塁打は0.04本と微増にとどまっている。また、試合数が増加したにもかかわらず、盗塁は減少。これまでに3度のトリプルスリーを成し遂げている山田哲人も、昨シーズンの8盗塁から4つ減らし4盗塁に終わった。

出塁率と長打率はともに上昇しており、その結果OPSも大きく上がった。OPS.731はセ6球団でトップの数字で、昨シーズンから上昇したのは平均得点同様、セ・リーグではヤクルトだけだった。

OPSについて個々の数字を見ると、平均以上とされる.700以上の選手(※)も大幅に増えた。昨シーズンは村上(1.012)が圧倒的な数字を残したものの、青木宣親(.981)、山田(.766)と、あわせて3人しか.700を超えなかった。

それが今シーズンは、村上(.974)、山田(.885)、サンタナ(.877)、塩見泰隆(.798)、青木(.719)、中村悠平(.718)と計6人がクリア。村上はやや数字を落としたものの、投手を除いた8人のスタメンのうち6人が.700を超えたことで、チーム全体としては大きく上昇した。

※打席数が規定打席の3分の2以上の選手を対象。

試合数増加も失点は減少、防御率が1点以上改善

最下位から優勝へ転じたことで、当然だが勝率は2割以上も上がった。また、試合数が増えたにもかかわらず失点は減少しており、防御率も1点以上改善した。

ヤクルト投手スタッツ比較,ⒸSPAIA


先発投手が試合を作った目安のひとつ、QS(6回以上自責点3以下)の割合も大きく改善されている。それでもQS%は43.3%とリーグ5位。奥川が66.7%(18先発12QS)、高橋が61.5%(13先発8QS)と、10先発以上した投手で60%を超えていたのはこの2人だけだった。チーム全体としては、中継ぎ陣の奮闘が大きかったと言えるだろう。

奪三振の割合を示すK%(奪三振/打席数)、与四球の割合を示すBB%(与四球/打席数)はともに改善。K/BB(1つの四球を与えるまでに三振をいくつ奪うかを表す)も大きく良化した。シーズン中から度々「ストライクゾーンの中で勝負をする」といった趣旨のコメントが出ていたが、これがしっかりといい結果に結びついていたようだ。

またゾーンで勝負することによって被本塁打数は増えそうだが、1試合あたりの被本塁打数を表すHR/9も良化。上記の表にはないが、FIP(奪三振、与四球、被本塁打で投手の能力を測る指標)も4.23から3.55へと改善した。

今シーズンのヤクルトは規定投球回に到達した投手も、2桁勝利を達成した投手も不在だった。1人の大エースに頼ることなく、チーム全体でK%、BB%、HR/9といった部分の改善に取り組み、それがチームの勝利につながったといえそうだ。

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