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球団カレンダーに見る選手の「格付け」主役は4月と8月、注文の多い選手も

2021 12/6 11:00山田ジョーンズ
イメージ画像,ⒸMityay PG/Shutterstock.com

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エースや4番は4月と8月、「準主役」は1月、3月、5月、7月

2021年の日本シリーズが終わって早や師走、カレンダーの季節である。今季は東京五輪期間の中断で日本シリーズが大幅にズレ込んだが、本来、「球団オフィシャルカレンダー」は11月23日のファン感謝デーで売り出されることが多い。

春夏秋冬の移ろう季節を表現する風景カレンダーのように、単に選手の写真が載っているだけではなく、チーム内の様々な思惑が隠されているのである。今回はセ・リーグの屋外球場を本拠地にする球団の例を挙げる。

カレンダーの掲載月は、言ってみれば選手の「格付けチェック」だ。

野球は開幕が4月、かき入れ時は夏休みの8月。ここに掲載される選手が「主役」で、エースや四番打者をはじめとする主力選手だ。

「準主役」は1月、3月、5月、7月。表紙をめくって最初のページはある意味「球団の顔」。ただ、かつて本塁打王を獲得した外国人選手を1月に掲載したが、来日はキャンプ開始の2月。1月のページは処分されていた。「ホームランキングのオレが、なぜチームのカレンダーに載っていないんだ」と、裏目に出たことがあった。

また、ひと昔前はシーズン130試合制だったが、最近はシーズン143試合制でクライマックスシリーズも導入されたため、開幕が前倒しされて3月になった。5月はゴールデンウィーク、暑い7月は野球の季節ということで、この四つの月が準主役選手の掲載になる。

2月はキャンプインの月で球春到来を感じさせるが、一方で「売り上げが下がるニッパチ(2月と8月)」だからか、主力選手はあまり掲載されない。6月も梅雨で、屋外でやる野球は雨天中止が多いというイメージが根強く残っている。9月はクライマックスシリーズ導入以降熱戦が繰り広げられるが、優勝をあきらめた球団にとって「消化試合」が多かったのだ。

カレンダーのデザインの決め方

カレンダーの1月~12月の数字を「月ダマ」、1日~31日の数字を「日ダマ」と呼ぶ。

「日曜始まり」の日ダマにするか、「月曜始まり」の日ダマにするか、毎年球団内で議論が紛糾するが、結局は「月曜始まり」で決着する。

いつのころからか試合日程、試合開始時間を入れることになり、文字校正が超大変になった。

デザインは球団が外部のデザイン会社などに制作を依頼する。毎年9月頃から最低4案から多いときは10案のデザイン案から選んでいく。黒縁で囲んだデザイン案が毎年出てくるのだが、遺影を彷彿とさせるとの理由でボツになる。これは当然のことである。

最終的にどのデザインにするかを決めるのは球団社長をはじめとするお偉いさんたち。ディテールにこだわる球団社長だと「A案とB案とC案をミックスさせるように」などと指示が飛び、デザイン会社は大変な苦労を強いられることになる。

これは写真選びも同様で、「A選手はこの写真、B選手はあの写真」と1枚ずつ自分ですべて選ばないと納得しない球団社長も存在した。現在はデジタル写真なので手間はかからないが、かつてフィルム写真だったころは何百枚もプリントアウトしなければならなかった。

自分の写真に細かく要望を出してくる選手

スポーツカメラマンが撮りたいのは、迫力ある臨場感にあふれる写真。打者で言えば「ジャストミート」で、バットとボールが当たった瞬間。投手で言えば「リリース」で、手からボールが放たれた瞬間。撮るのも難しい分、撮ったときはカメラマン冥利に尽きる。

しかし、選手が一番嫌がるのが、実はこの写真なのである。歯を食いしばって迫力満点の表情だが、その分、顔が崩れる。 「自腹で50部購入して知り合いに配るのに、一年間顔が崩れた写真のカレンダーを壁に掛けておくなんて、勘弁してくれよ。打者は構えて投球を待っている瞬間、投手は足を上げている瞬間でいいんだよ」

カメラマン初心者でも撮れる写真だ。撮る方と撮られる方、好む写真が真逆なのだ。

かつては一軍クラスの選手しかカレンダーに掲載されなかったのだが、チーム選手会から「なるべくたくさんの選手を載せてあげてほしい」という要望が出た。1ページに複数の選手が掲載されるようになった。

しかし、控え選手の方が制作スタッフに文句をつけてくる。逆に言えば、そんな細かなところにこだわる選手は主力級になっていないことが多い。

「僕の写真、自分で選ばせてください」

「それをやると全員が同じことを言い出して収拾がつかない。全員のバリエーションを考えながら掲載するから、それはできない」

「なら、せめて、こういう写真を希望します」

同じような写真ばかりにならないように、打者は「構え」「ジャストミート」「振り切り」。投手は「足上げ」「リリース」「投げ切り」。それに「一塁カメラ席」「三塁カメラ席」「センターカメラ席」「バックネット裏」を掛け合わせて掲載選手のバリエーションをつける。

かくも大変なカレンダー制作。このような経緯があって、売り出される。そんな内情を思い浮かべながらカレンダーをめくるのも楽しいのではないか。

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