試合数増加も本塁打数は減少
昨シーズンの3位からさらに上を狙った中日はBクラスとなる5位に終わった。契約最終年だった与田剛監督は退任し、すでに立浪和義新監督体制として新たなスタートを切っている。
今年の中日は投手陣こそ結果を残したものの、打撃面で苦しみ得点を挙げることができなかった。Aクラスに入った昨シーズンとどこが変わったのか、打撃スタッツ、投手スタッツを比較してみたい。
まず打撃スタッツから見ていく。中日はリーグワーストの405得点でシーズンを終えた。5位の阪神(541得点)と100点以上の開きがあることからも、その得点力不足の深刻さがわかるだろう。昨シーズンも429得点でリーグワーストではあったが、それをさらに下回っている。昨シーズンリーグ5位の468得点だったヤクルトが外国人選手の補強などで得点力を上げ、リーグトップの625得点を叩き出したのとは対照的だ。
安打数、チーム打率、本塁打数も数値は悪化した。とくに本塁打は昨シーズンより23試合増えたにもかかわらず1本減っている。チーム最多はビシエドの17本。20本塁打に到達した選手が1人もいなかったのは、セ・リーグで中日だけ。立浪新監督がビシエドに本塁打数の増加を求めるのもうなずける。
試合数の増減に左右されない出塁率、長打率、OPSもすべて下がった。なかでも出塁率は3割を切っており、2012年から2021年の10年間において、セ・リーグで出塁率が3割未満となったのは今年の中日だけだ。本塁打不足による長打率悪化に加え、出塁率もここ10年でワーストだったこともあり、当然OPSも悪化してしまった。
数々の数値が下がった中で上昇したのが盗塁数である。前年から1試合あたりで見ると約1.5倍。代走の切り札に定着した高松渡(15盗塁)とシーズン途中にトレードで加入した加藤翔平(8盗塁)の存在が大きい。
盗塁こそ増えたが肝心の出塁率は下がり、長打も減れば得点力が下がるのも必然だった。
投手スタッツは良化しリーグ屈指に
打撃スタッツとは対照的に投手スタッツは大きく良化した。試合数が23試合減ったにもかかわらず、失点は減少。防御率は大きく改善している。失点はリーグで唯一の500点未満であり防御率もトップだった。
また、先発投手が試合を作ったと言えるQS(6回以上自責点3以下)の達成率は7.4%も上昇。柳裕也(172回)、大野雄大(143.1回)、小笠原慎之介(143.1回)の3人が規定投球回に到達した。
中日から規定投球回に到達した投手が3人以上となったのは2011年のネルソン(209.1回)、吉見一起(190.2回)、チェン(164.2回)以来、10年ぶり。安定した成績を残すことができる先発ローテーション投手が3人もいたことで投手陣の安定感は増した。
また内容を見ると、対戦打席数に対する奪三振の割合を示すK%(奪三振/打席数)こそ若干悪化したが、対戦打席数に対する与四球の割合を示すBB%(与四球/打席数)は改善。結果として与四球ひとつあたりの奪三振数を表すK/BB(奪三振/与四球)も良化している。さらに被本塁打数も減った。
この結果、投手の責任である被本塁打、与四死球数、奪三振数のみで投手の能力を評価した指標であるFIPはリーグ3位の3.69からリーグトップの3.29となった。投手力はリーグ屈指の力を持っていたのである。
今シーズンの中日を見ると、打撃陣を強化することが来年の順位を上げる必須条件となることは明らかだ。最重要項目である得点力不足を解消するべく10月のドラフト会議ではブライト健太(上武大/1位)と鵜飼航丞(駒沢大/2位)の両スラッガー候補を指名した。プロの世界で1年目から主力クラスの成績を残すのは至難の業かもしれない。そのなかで2年目、3年目への希望が見いだせる結果を残すことが求められる。
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