日本人右打者でMLB最長は田口壮の8年
広島・鈴木誠也外野手(27)がポスティングシステムでメジャー挑戦を目指すことになり、米球界では早くも争奪戦の様相を呈している。
MLB機構は全30球団に獲得可能選手として通知し、交渉期限は日本時間12月23日までと設定。すでにドジャース、マリナーズ、レンジャーズ、パドレス、レイズ、カブスなどが興味を示していると報じられている。
これまで日本球界を代表する選手が海を渡ってきたが、多くは投手で、野手でも左打ちが多い。メジャーでプレーした日本人右打者はわずか5人しかいないのだ。
日本ハムの監督に就任した新庄剛志は、イチローと同じ2001年に阪神からFA移籍し、メッツとジャイアンツで計3年間プレー。1年目は123試合出場で打率.268、10本塁打、56打点と上々の成績を残したが、3年間トータルでは打率.245、20本塁打、100打点にとどまった。
日本人右打者で最も長い8年間プレーしたのがオリックスからFA移籍した田口壮だ。2002年からカージナルス、フィリーズ、カブスとわたり歩き、MLB通算672試合で打率.279、382安打、19本塁打、163打点。ワールドシリーズ優勝も経験したが、代打や守備固めでの起用も多かった。
城島健司はMLB4年で48本塁打
現ロッテ監督の井口資仁は2005年からホワイトソックス、フィリーズ、パドレスで4年間プレー。1年目に打率.278、15本塁打、71打点でワールドシリーズ優勝に貢献するなど、MLB通算493試合出場、打率.268、OPS.739、44本塁打、205打点をマークした。494安打と205打点は日本人右打者の中で最多となっている。
中村紀洋は近鉄時代の2002年オフにFA宣言してメッツと契約間近までいきながら破談。2005年にポスティングシステムでドジャース入りし、1年間だけプレーしたが、ケガの影響もあってシーズンの大半を3Aで過ごした。MLBでは17試合出場で打率.128の成績が残っている。
城島健司はダイエーからFA宣言し、2006年からマリナーズで4年間プレー。1年目は打率.291、18本塁打、76打点をマークしたが、徐々に成績は下降し、MLB通算成績は462試合出場で打率.268、48本塁打、198打点だった。本塁打数は日本人右打者で最多となっている。
6年連続3割25本塁打の鈴木誠也
鈴木はどこまで活躍できるだろうか。城島の1年目の成績はひとつの目安となりそうだ。打率2割8分、20本塁打あたりが期待される数字かも知れない。
日本球界での実績だけで比較すると、鈴木は過去の右打者5人より上と言える。王貞治、落合博満に続いて史上3人目の6年連続3割25本塁打。特に今季は打率.317で首位打者に輝き、リーグ3位の38本塁打、同4位の88打点と文句のない成績を収めた。
中村紀洋は2年連続40発をマークした2002年なら状況は違ったかも知れないが、渡米前年の2004年は19本塁打と成績を落としていた。城島も2年連続30発をマークしていたが、渡米前年は24本塁打とやや成績を落とした上、捕手という難しいポジションだった。
そういう意味では右肩上がりの成長を続け、今がピークとも思える27歳の鈴木の挑戦は大いに期待できるだろう。
OPSは12球団トップ、長打力でも村上宗隆と岡本和真を上回る
今季の打撃成績を9分割したコースごとに示したSPAIAのデータでは、ほとんどが打率3割以上を示す赤色に染まっており、穴の少なさが浮き彫りになっている。
外角低めだけは.204と打率が低く、課題と言えるかも知れないが、ど真ん中は打率.414、真ん中高めは.409と甘いコースにはめっぽう強いことが分かる。その他のコースも軒並み高打率だ。
また「出塁率+長打率」で算出され、MLBでは一般的な指標でもあるOPSは12球団1位の1.072。本塁打王を分け合ったヤクルト・村上宗隆(.974)と巨人・岡本和真(.871)を上回っている。パ・リーグ首位打者のオリックス・吉田正尚でさえ.992だ。
さらに本塁打を打つまでにかかる打数を示すAB/HRも12球団1位の11.4で、村上(12.8)と岡本(13.4)より上。「長打率-打率」で算出され、純粋な長打力を示すIsoPも12球団1位の.322で、村上の.288、岡本の.265を上回っている。
つまり、鈴木は確実性と長打力を兼ね備えた、現在の日本球界最高の打者と言っても過言ではないのだ。あの大谷翔平も「今のプロ野球の中では頭一つ抜けている」と認める鈴木の実力。日米を股にかけた7年連続3割25本塁打も決して夢物語ではない。
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