1回を投げきれず…屈辱の春を経て
オフシーズンに入った阪神タイガースでも、契約更改が始まった。主力選手は12月を予定しており、まずは2軍が主戦場だった若手。21日は合計9選手が来季の契約にサインした。
コロナ禍の取材態勢で2軍の本拠地・鳴尾浜球場に出向く機会も極端に減少。そんな中で、契約更改の場は、1年でほとんど取材することができなかった若虎たちの1年の「振り返り」や来季への「決意」を耳にできる貴重な場所になる。
取材した選手の中で印象的だったのは、1年目を終えた佐藤蓮。上武大からドラフト3位で入団し、春季キャンプも1軍でスタートしながら制球難を露呈し実戦初登板となった2月7日の紅白戦では1安打4四死球で任された1イニングを投げきれず、試合途中で打ち切りとなる屈辱も味わった。
その後、フォーム修正や中継ぎから先発への転向も経験。同期入団の佐藤輝明や中野拓夢の活躍をよそに1軍では登板なしに終わった。
課題の制球向上で確かな手応え
「(2軍の)自分たちは昼間練習があって、夜ご飯食べてる時に1軍の試合があって、輝だったり将司さんが投げていたり。こんなところで何やってんだろうって、そういう悔しい気持ちにもなって…」。プロの壁にぶつかり、悔しさを噛みしめる1年になった。
それでも、次の瞬間には「もう来年は始まっているので。負けないぞという気持ち」と表情を引き締め、逆襲を宣言。確かな手応えもある。
「1軍キャンプに連れていってもらって、自分の思うようにプレーできなくて、そこからのスタートだったけど、どんどん自分のやってきていることがプレーとしてできている。ある程度、ゾーンの中に自分のボールをしっかり投げられる」
脚光を浴びることはなくても、この1年は来季勝負を懸けるために決して無駄な時間ではなかった。
目標は160キロ!ワクワクする投手目指し
目標について問われると、きっぱりと言った。
「ずっと言ってきてるんですけど、160キロ投げたいのはずっと思ってる。全然投げられる数字だと思う。まっずぐというのは見ている人もワクワクするボールなんで。見ている監督、コーチも魅力ある選手を見たいと思うので、カーブとか得意なんですけど、そこにあまり頼らず」
初昇格や登板数を掲げることなく、佐藤蓮という投手の存在価値を思わせるような言葉を繋いでいった。
年俸は今季の1000万円から60万円ダウン。今季も最速155キロを計測した豪腕が、プロとして生きる道を見つけ、発奮材料も得た時間を考えれば“勉強料”としては安いはず。話を聞いたのはわずか10分でも来季、甲子園で160キロを投げ込む背番号30の姿を想像せずにはいられない時間だった。
【関連記事】
・【数字で見るチーム力の変化:阪神編】新人の活躍目立つも課題の得点力不足は解消できず
・阪神・井上広大が二軍打点王!来季は一軍で奥川恭伸とライバル対決続編へ
・最有力は誰だ?セ・リーグ新人王候補をデータ比較、数値トップは…