履正社高時代に全国制覇した井上
シーズンの大半を首位で過ごしながら最後はヤクルトに逆転を許し、2位に終わった阪神。一軍はリーグ優勝を逃したが、二軍はウエスタン・リーグで優勝し、ファーム日本選手権でもロッテを破って3年ぶりのファーム日本一となった。
一軍の戦力は分厚いが、それでも次代を担う若虎は着実に成長している。その一人が50打点でウエスタン打点王に輝いた2年目の井上広大だ。
履正社高時代は夏の甲子園決勝で星稜・奥川恭伸(現ヤクルト)を攻略し、同校初の全国制覇。高校通算49本塁打をマークした。2019年ドラフト2位で入団し、身長188センチ、体重95キロの恵まれた体格で期待される20歳の長距離砲だ。
昨季はシーズン終盤に一軍昇格し、6試合で11打数1安打とほろ苦い経験もしたが、今季は二軍でじっくりとキャリアを積んだ。
1年目より着実に成長
プロ入り後2年間の二軍成績が下の表だ。
奇しくも昨年と出場試合数は1試合しか違わず、打席数も昨季は280、今季は275と近いため比較しやすい。安打数、打点、打率といずれもアップさせており、成長の跡がうかがえる。
「長打率-打率」で算出され、より純粋な長打力を示すIsoPも.165から.196に上昇。本塁打数は同じ9本だが、確実性とともにパンチ力もアップしていることが分かる。
7月11日の中日戦から17試合連続安打をマークし、東京五輪中断期間に行われた8月6日のエキシビションマッチ・オリックス戦では、今季13勝を挙げた宮城大弥から左前打を放った。
8月20日に右足脛骨を骨折して戦線離脱したが、ファーム新記録の18連勝にも貢献している。地元・大阪出身の大砲候補として実り多い1年となっただろう。
大山悠輔、佐藤輝明と和製クリーンアップ結成に期待
ウエスタンの打点2位はソフトバンク・リチャード。今季終盤に一軍昇格して7本塁打を放ったパワーヒッターだ。
ウエスタンで本塁打王に輝いたリチャードは、76試合に出場して12本塁打、49打点、打率.226。井上の方が打率、打点では上回っている。ということは井上も一軍で活躍できる…という三段論法が通用するほど甘くはないが、1年目から順調にホップ、ステップを刻んできた若虎の3年目に期待せずにはいられない。
甲子園は言わずと知れた浜風がライトからレフト方向に吹くこと多く、左打者には不利。裏を返せば、右のスラッガーには追い風となる。昨季28本塁打を放った2016年ドラフト1位の大山悠輔、今季24本塁打と大活躍した佐藤輝明と井上が和製クリーンアップを組むほどの力を付ければ、得点力は間違いなく上がる。
阪神は外国人8人態勢だったが、若手育成の弊害にもなりかねない。打線の底上げを図るためには、多少は目を瞑ってでも佐藤や井上に経験を積ませるべきだろう。
井上が高校時代に夏の甲子園で頂点を争った奥川は、今季9勝を挙げるなど、ひと足早く一軍で活躍している。ライバル物語の続きを、今度はプロの舞台で見てみたい。
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