後半戦に進化を見せた右腕の投球
今季、節目のプロ10年目を迎えた日本ハム・上沢直之。
開幕直後こそ精彩を欠いたものの、終わってみればキャリアハイとなる12勝、リーグ3位の防御率2.81をマーク。中でも東京五輪期間中のトレーニングを経て「自分の感覚とすり合わせた球を投げられるようになった」と話す後半戦は、防御率をはじめとする成績が軒並み良化した。
今回はそんな進化を見せた右腕の投球について探っていきたい。
まずはカウント別のストライク率を見てみよう。前半戦はボール先行時にストライクを取る割合が67%と特筆する数字ではなかったものの、後半戦は80%まで上昇。投手不利なカウントから高い確率でストライクを稼ぐというのは、四球を減らす上で重要な能力だ。
球種改善で不利な状況でも勝負可能に
そんな変化の要因として挙げたいのが、持ち球のクオリティー向上である。
前半戦に30%を超えるボールゾーンスイング率を記録したのは2球種だけだったが、投球数の少ないツーシームを含めてほぼすべての球種で数字が改善。ボール球を振らせれば凡打はもちろん、空振りやファウルになる確率も上がる。
夏場以降の上沢は持ち球すべてでカウントを稼げるようになり、不利な状況でも自らの選択肢を狭めることなく勝負できていた。
そして、持ち球の精度アップは打者を追い込んだ後のピッチングにも影響を与えている。
2ストライクからそれまで多用してきたフォークやスライダーを選択する場面は減少。一方でチェンジアップ、カットボールといった球種で三振を奪うケースが増え、さまざまな球種がウイニングショットとして機能していた。
こうして打者に的を絞らせない投球スタイルを確立できたことが、後半戦の好成績に結びついたと考えられる。
リーグ屈指の投手へとステップアップ
守備が干渉しない三振や四球は、投手の能力を測る要素として重要視されるようになった。それらで構成された指標であるK/BBを見てみると、後半戦の上沢は6.89というトップクラスの数字をマークしている。カウントをコントロールする力に磨きがかかった上沢は、リーグ屈指の投手へとステップアップしたといえるだろう。
来季は新庄剛志監督率いる新体制のもと、新球場の開場前最後のシーズンを迎える日本ハム。2004年の札幌移転後からここまで5度のリーグ優勝、2度の日本一に輝いたが、際立つのはダルビッシュや大谷といった絶対的エースの存在だ。さらなる飛躍を予感させる背番号15が札幌のファンに再び歓喜の瞬間をもたらせるのか、そのピッチングに注目したい。
企画・監修:データスタジアム
執筆者:矢島 慎太郎
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