優勝の可能性を残したい今季最終戦
阪神は今日26日の中日戦(甲子園)が今季最終戦。阪神が敗れてヤクルトがDeNAに勝つか引き分けならヤクルトの優勝、阪神が引き分けでもヤクルトが勝てばヤクルトの優勝が決まる。阪神は何が何でも勝って、優勝の可能性を残したい。
阪神がヤクルトに首位を明け渡したのが9月22日。ゲーム差を大きく離されることはなかったものの、ここまで一度も首位を奪い返すことはできなかった。
その要因のひとつが佐藤輝明の大スランプだ。8月22日の中日戦から10月5日のDeNA戦でヒットを打つまで、セ・リーグワースト記録を更新する59打席連続無安打。その間、二軍落ちも経験し、プロの壁を嫌というほど思い知らされた。
22歳の新人にチームの浮沈を背負わせるのは酷な話だが、佐藤が今季の阪神を象徴する選手であることは厳然たる事実だ。逆転優勝をつかむにしろ、逃すにしろ、その中心を形成する一人に佐藤がいることは間違いない。
歴代ワースト8位の171三振
佐藤が23号を放ったのが8月19日のDeNA戦。その日の試合終了時点で打率は.280だった。DeNA牧秀悟や広島・栗林良吏らハイレベルなルーキーを尻目に、新人王の最有力候補と見られていたのも当時の成績なら当然だろう。
そこからまさかの長いトンネル。8月29日にスタメンを外れ、9月10日から23日まで二軍で再調整した。矢野燿大監督の起用法や二軍に落とした判断に賛否両論が渦巻いた。成績が落ちるとOBやファン、マスコミが騒ぎ出すのは人気球団の宿命だ。
スランプに陥るまではワースト記録を更新するペースだった三振数は、皮肉にも出場機会が減ったことで落ち着いた。現在171三振。12球団ワーストだが、不名誉な記録更新は免れた。
シーズン最多三振は近鉄・ブライアントが1993年に記録した204三振。歴代ワースト10にブライアントが4度も入っている。
佐藤は現段階で歴代8位。今日の試合で2三振すれば歴代6位の岩村明憲(当時ヤクルト)に並ぶ。
2019年の村上宗隆はPA/K3.22
三振数だけでは打席に多く立った方が増えるため、三振を一つ取られるまでにかかる打席数を示すPA/Kで比較してみると、見え方が違う。
佐藤は現在2.64。平均すると3打席に一度は必ず三振している。ワースト10の中でPA/Kが3以下なのは、ブライアントが3度と2014年のエルドレッド(当時広島)の2.99のみ。しかもブライアントでさえ、今年の佐藤より低かったのは2.33だった1990年だけだ。
184三振した2019年の村上宗隆(ヤクルト)もPA/Kは3.22。佐藤がもし、二軍落ちせず出場を続けていたらワースト記録を更新していた可能性は十分にあった。
だからと言って責められるべきではない。今年苦しんだ経験は間違いなく来季以降に血肉となる。村上も184三振の経験を活かして、今やセ・リーグを代表するスラッガーに成長したのだ。誰よりもバットが空を切った苦味は体に染み込んでいるだろう。
佐藤は10月24日の広島戦で九里亜蓮から約2カ月ぶりの24号3ランを放った。調子はようやく上向きつつあるのかも知れない。
泣いても笑っても最終戦。激動の1年の締めくくりは、迷いのないフルスイングを見せてほしい。たとえ空振りでもいい。三振でもいい。思い切り振ることこそが、佐藤の、そして阪神の未来を明るくするはずだ。
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