イチローの「最後のチームメイト」は谷佳知
2019年3月21日、イチローがNPB1278安打、MLB3089安打という空前の記録を残して引退した。東京ドームで行われたアスレチックス―マリナーズの開幕第2戦が最後の試合となった。多くのファンがスーパースターの引退を惜しんだ。
ところでイチローは2000年オフにポスティングシステムでMLBに移籍している。それ以降、NPBの歴史とは無縁だった。近鉄の消滅も、楽天の新設も、交流戦やクライマックスシリーズも経験していない。
そしてイチローのオリックス時代のチームメイトも2019年時点で、すべて引退していた。このときのMLB開幕戦の前にはマリナーズ対巨人のエキシビションゲームが2試合行われ、岡本和真や丸佳浩らも対戦したが、実際にチームメイトとしてイチローとともに出場した選手は一人もいなかったのだ。
イチローのチームメイト(一軍試合にともに出場)の「最後の7人」が下の表だ。
谷佳知はイチローよりも一学年上。「右のイチロー」と呼ばれた安打製造機だったが、巨人にトレードで移籍、最後はオリックスでプレーするも2000安打にはあと一歩届かなかった。
平井正史はイチローが当時のNPB記録である210安打を打った翌年に新人王。救援投手として息の長い活躍をした。日高剛は強打の捕手。オリックスで15年の実働ののち、最後の2年は阪神でプレーした。
木田優夫は巨人からオリックスへ、さらにヤクルト、日本ハム。この間2回MLBに挑戦し、2004、2005年とマリナーズでイチローのチームメイトだった。
田口壮はイチローとドラフト同期の外野手。イチローがMLBに移籍した翌年にMLBカージナルスに入団し、スーパーサブ的な選手として名将トニー・ラルーサ監督の信頼が篤かった。晩年にオリックスに復帰している。
葛城育郎は左の強打者で、「イクロー」と呼ばれることもあった。斉藤秀光、谷中真二との交換トレードで牧野塁とともにオリックスから阪神に移籍している。川越英隆はイチローと同世代。カットボールを武器とする技巧派投手で、主として先発で活躍した。
松坂大輔、正田樹はNPBで対戦
なお、NPBの公式戦でイチローと対戦した投手は今季ただ一人いた。西武の松坂大輔だ。松坂は1998年のドラフト1位で西武に入団。最初の対戦でイチローを抑え込んだ松坂は「今まで自信が持てなかった。でも、今日で自信が確信に変わった」という名言を残した。松坂は今季限りでの引退を表明。イチローとの名勝負は歴史の1ページとなる。
NPBではないが、今年も独立リーグ愛媛で投げる正田樹は、2000年に日本ハムのルーキーとして1試合だけイチローが出場した試合で投げている。
NPBではイチローのチームメイトだった選手はいないが、実は今季、日本でプレーする外国人選手の中には、イチローと一緒にプレーした選手がいる。オリックスのアダム・ジョーンズだ。ジョーンズは2003年にマリナーズから1巡目(全体37位)で入団。9番中堅でメジャーデビューした2006年7月14日のブルージェイズ戦に、イチローは1番右翼で出場した。
また、昨年限りでDeNAを退団したホセ・ロペスは、ルーキーだった2004年10月1日、イチローがジョージ・シスラーのシーズン安打記録を抜く258安打を打った試合を遊撃手として見届けていた。
今季独立リーグ栃木でプレーした川﨑宗則も2012年、マリナーズでチームメイトだった。2019年のイチローの引退試合では、チームメイトのMLB通算424本塁打の強打者、エドウィン・エンカーナシオンが報道陣に混じってスマホでイチローを撮影していたが、メジャーリーガーの多くは「イチローとプレーしたこと」を生涯の誇りにしているのだ。
松井秀喜の「最後のチームメイト」は上原浩治と阿部慎之助
イチローから遅れること2年、巨人の松井秀喜がヤンキースに入団した。NPBの中軸打者がMLBに挑戦するのは初めて。松井は2年目に31本塁打を打ったが、これは今年、大谷翔平に抜かれるまでは日本人選手として最多だった。
松井秀喜のチームメイト「最後の6人」が下の表だ。
2019年まで現役だった上原浩治と阿部慎之助が最も長く現役を続けたチームメイト。上原はMLBではクローザーとして活躍。1歳年上の松井が引退を表明したときには涙を流してこれを惜しんだ。
続いて松坂世代の捕手の加藤健。さらに松井と中軸を打った高橋由伸、さらにこれもMLBに挑戦した高橋尚成、岡島秀樹の名前が並ぶ。
松井秀喜はMLB最終年はレイズでプレーしたが、この時のチームメイトでは現ドジャースの左腕デビッド・プライスらが現役だ。
ダルビッシュ有の元チームメイトは現役12人
ダルビッシュ有は、2011年限りで日本ハムを退団し、ポスティングシステムでMLBに移籍した。まだ10年前だから、たくさん現役選手がいるように思えるが、すでに12人になっている。
ダルビッシュの在籍当時と変わらず日本ハムでプレーしているのは宮西尚生、斎藤佑樹、杉谷拳士、中島卓也の4人だけ。鶴岡はソフトバンクを経て日本ハムに戻っている。
NPB最終年の2011年、ダルビッシュは18勝6敗、防御率1.44、232回を投げて276奪三振という文句のない成績だった。
自身に続くスター候補として目をかけた中田翔も巨人に移籍。あの年の快投を目の当たりにしたチームメイトも年々、少なくなっている。
メジャーで成功を収めたスーパースターと同じユニフォームを着て一緒にプレーした経験は掛け替えのないものだ。取り組む姿勢や考え方など学んだことが受け継がれていけば、その球団にとっても貴重な財産となるだろう。
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