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佐々木朗希がロッテ「Vの使者」となるか?加速する成長速度と今後の課題

2021 9/23 06:00浜田哲男
千葉ロッテマリーンズの佐々木朗希,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

楽天戦での好投がチームの勢いを加速

115試合を消化した時点で56勝42敗17分けと14個の貯金を作り、首位を走るロッテ。シーズン前半は振るわなかった先発陣もここにきて安定感が出て、リーグトップの得点力を誇る打線も好調を維持。投打ががっちりとかみ合っている印象だ。

残すところ28試合とここからが正念場となるが、やはり重要なのは先発陣が最少失点に抑えて試合をつくること。接戦に持ち込めば、粘り強さを見せる打線と鉄壁のリリーフ陣が勝利を手繰り寄せるだろう。

注目は9月10日の楽天戦で自己最長の8回を投げ、2失点と好投した佐々木朗希。楽天の先発・田中将大と終盤まで投げ合い、次世代のエースと呼ぶに相応しい好投を見せた。この日の勝利を含め、チームは引き分けを挟んで6連勝を飾った。佐々木の熱投がその後に投げた先発陣の刺激となり、チームの勢いをさらに加速させた感がある。

伸びのある直球を軸に変化球も生きる

投げる度に成長を感じさせる佐々木。10日の楽天戦ではプロ入り後の自己最速となる158kmをマークしたが、驚かされるのはそのスピードボールを制球できていることだ。地を這うような直球で内外角の際どいコースをつきながら、与四球は8回を投げてゼロ。7回の先頭打者から8回にかけて5者連続三振も奪うなど楽天打線をねじ伏せた。

特に中盤以降、楽天の打者が直球を打ってのフライアウトが多く見られたことでも証明されたように、球の伸びは終始衰えなかった。直球の平均球速は驚異の152.1kmとオリックスの山本由伸の151.9kmを上回る。球種別の投球割合でも直球は全体の60.3%を占め、佐々木の生命線となっていることは確かだ。

変化球の制球もいい。平均球速140kmのフォークは直球の次に投球割合が多く(20.1%)、被打率は.162。鋭く大きく曲がるスライダーにいたっては被打率.111と圧巻の数値をマークしており、両球種とも被本塁打はゼロ。打者の手元で伸びる直球を軸に変化球のコントロールも優れているのだから、そう簡単には打てない。

走者を背負った場面での投球が課題

一方、課題は得点圏での被打率。走者なしのケースでは被打率.182と抑えているが、メンタル面に原因があるのか、走者二塁のケースでは.533と打ち込まれるなど、得点圏での通算被打率は.333と振るわない。

また、ゾーン別の投球割合を見ると、右打者の外角中程には18.5%、外角低めには27.4%と外角への投球割合がかなり多い。一方、内角中程は7.5%、内角低めは.4.3%、内角高めは6.4%と内角をまだまだ攻めきれていない。これは対左打者でも同様の傾向だ。走者を背負った場面でも、厳しいコースを突いていけるかが今後成長を目指す上でのポイントになるだろう。

ただ、登板数(先発で8試合)、投球回(44.1)ともにまだ少ないが、防御率3.05、1イニングあたりに何人の出塁を許したかを表すWHIPが1.15と、今後の投球にも期待がもてる数値をマークしている。リーグ優勝を争う試合でマウンドに上がることが予想されるが、そうした痺れる試合で投げることで、成長速度はさらに加速するだろう。

これまでは、その成長を球場全体が見守っているという雰囲気だったが、今の佐々木には勝利を呼ぶ投球が期待でき、多くのファンもそういう目で見ている。他の先発投手にとっても、若い佐々木の投球は刺激になって相乗効果が生まれる。1974年以来となる勝率1位でのリーグ優勝を狙うロッテ。そのキーマンになる可能性を秘めている。

※2021年9月22日試合終了時点

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