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DeNA牧秀悟は史上16人目の新人20本塁打なるか 阪神・佐藤輝明と揃って達成なら40年ぶりの快挙

2021 9/23 11:00林龍也
DeNAの牧秀悟,ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

40年ぶりの複数新人による同一シーズン20本塁打なるか

2021年は、近年稀に見るレベルでルーキーたちが活躍を見せている。佐藤輝明(阪神)や牧秀悟(DeNA)、栗林良吏(広島)に加え、中野拓夢、伊藤将司(ともに阪神)らも例年なら新人王候補の本命となっていただろう。それほどまでに今年の新人王争いはレベルが高い。

中でも特に注目を浴びているのが、佐藤輝と牧のスラッガー2人だ。近年は1年目のスラッガーがいきなり活躍することが減ってきたが、2人は既に数々の記録を達成、もしくは塗り替える活躍を見せている。

佐藤輝はここまで105試合に出場し、打率.254、23本塁打、60打点をマーク。新人左打者としては、1946年に大下弘(セネタース)が記録した21本塁打を75年ぶりに更新した。夏場以降は不振に陥り、現在は二軍調整中だが、終盤にかけてその力が必要な時が来るだろう。

一方の牧は、111試合で打率.280、18本塁打、57打点をマーク。調子を落とした時期もあったが、東京オリンピックの中断期間で見事に復調。8月26日の阪神戦では、佐藤輝の目の前で新人初の公式戦サイクル安打を達成した。

その牧が残りのシーズンで挑むことになるのが、佐藤輝に続く新人20本塁打だ。

新人20本塁打は2003年村田修一以来

新人20本塁打達成者の成績


佐藤輝に続いて牧も達成となれば、史上16人目となる。そもそも、新人20本塁打という記録自体、プロ野球の長い歴史で15人しか達成しておらず、佐藤輝の前に達成したのは2003年の村田修一(当時・横浜)にまで遡る。その前は1990年の石井浩郎(近鉄)と、やはり10年以上も間が空いており、プロ野球で新人が本塁打を量産することの難しさがうかがえる。

しかし、15人しか達成していない記録にもかかわらず、複数人が同一シーズンで達成したのがこれまでに4度(9人)ある。1981年の原辰徳(巨人)・石毛宏典(西武)をはじめ、1969年の有藤通世(ロッテ)・田淵幸一(阪神)、1958年の長嶋茂雄(巨人)・森徹(中日)、そして1950年の深見安博(西鉄)・戸倉勝城(毎日)・樋笠一夫(広島)だ。

今シーズン牧も20本塁打を達成すれば、40年ぶり5度目の同一シーズン複数人の新人20本塁打となる。

牧に期待したい”先輩”超え

新人20本塁打達成者の成績


佐藤輝、牧を含めた16人の成績を比較すると、石井浩郎の成績が際立っていることがわかる。肝炎による入院で出遅れたため、86試合のみの出場ながら22本塁打、長打率.605、出塁率.410でOPS1.0超え。本塁打率12.0は16人中トップ、100試合未満での20本塁打達成は石井のみだ。

一方、最多の31本塁打を放ったのが、1986年の清原和博(西武)と1959年の桑田武(大洋)の2人。ともにOPS.900を上回っており、ハイレベルな成績を残していたことがわかる。清原にいたっては高卒1年目だったのだから、もはや異次元レベルと言える。

桑田は本塁打王も獲得、さらに25盗塁をマークして新人王にも輝いたことから、打力だけの選手でなかったことがわかる。今年、中央大、そしてプロの後輩でもある牧が安打を重ねるたび「桑田以来」の文字が躍っている。これも何かの巡り合わせだろうか。

また、忘れてはならないのが「ミスター」こと長嶋茂雄だ。1958年に本塁打王、打点王、最多安打のタイトルを獲得し、新人王にも輝いている。さらに37盗塁も記録しているのだから、手が付けられない新人だったのだろう。

長嶋と言えばヘルメットを飛ばすほどの豪快な空振りが語り草だが、この年の三振は53個で、15人中4番目の少なさだ。現役生活17年間で見ても、K%(三振/打席)が10%を越えたのは3回のみと、非常にバットコントロールの優れた打者だったことが分かる。

せっかくなので、最後に16人の三振数を見てみよう。やはりというべきか、151三振・37.8%の佐藤輝が断トツで多い。一番少なかったのは戸倉勝城の39三振・8.7%で、平均は85三振・19%となっている。ちなみに、2019年に規定打席に到達した60人の平均が97三振・17.3%だったことを考えると、そこまで多いというわけでもなさそうだ。

今シーズンも残り30試合を切っているが、今の牧の調子なら20本塁打は決して難しい数字ではないだろう。20本塁打と言わず、先輩でもある村田、桑田らの成績を超えるくらいの活躍を期待したい。

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