14日広島戦で価値あるタイムリー
「勝負強さ」は廃れないし、自然消滅していくものでもない。梅野隆太郎が京セラドームで響かせた快音がそれを証明した。8月14日の広島戦。2回に先制点を叩き出したのは背番号2のバットだった。
無死一、二塁で打席に入り、九里亜蓮の投じた内角やや高めのシュートを振り抜いてしぶとく右前に落とす適時打。レギュラーシーズン後半戦2試合目にして自身初の安打を記録した。
4回には先頭打者で再び右前に運んで出塁。5回の三ゴロを挟んで迎えた7回2死二塁の第4打席は塹江敦哉の144㌔直球を捉えて一塁線を鋭く破るこの夜2本目の適時打で猛打賞。直前にリーグトップに並ぶ17個目の盗塁を決めた二塁走者・中野を生還させる一打を本人は「中野が盗塁してくれましたし、点差は何点あっても良いので、何としてもランナーを返したいと思って打席に入りました。良い追加点になりました」と振り返った。
ルーキーの快走を無駄にせず、少しでも敵を引き離す。キャリアを積み重ねた中堅の存在感と、正捕手としての冷静な視線を感じさせる3本目の安打だった。
五輪では出場1試合、2打席のみ
健在だった「得点圏の鬼」。開幕から好機で打点を量産し、一時は5割を超える得点圏打率をキープしていた。
一時の勢いはなくなったものの、前半戦終了時点で同打率.385はチームトップ。梅野の「勝負強さ」は間違いなく、タイガースの前半戦首位ターンの原動力と言えた。
わざわざ「健在」と書いたのは、約1カ月の五輪ブレークがあったからだ。梅野は侍ジャパンの一員として東京五輪を戦った。ソフトバンクの甲斐拓也が先発マスクを被り、多くはベンチスタート。期間中は出場1試合、計2打席に立っただけだった。
緊張感ある舞台に身を置いていたとはいえ、連日エキシビションマッチに出場していた選手に比べれば実戦不足は否めなかった。
背番号2抜きにはあり得ない頂点への道
13日の練習前にシート打撃に参加したものの、試合では3打数無安打。一抹の不安もよぎったが、しっかりと結果を残しチャンスに強い「特性」も見事に発揮した。
矢野燿大監督も「五輪で打席になかなか立てていなかったし、どうかなというところはあったけど、タイムリー、つなぎもあった。嫌な流れを自分で断ちきれるものになったと思う」と、この3安打の意味を強調。ジェリー・サンズ、大山悠輔がともに2本塁打を放ち9得点した大勝の中で、梅野の躍動は渋く光った。
ペナントレースはここから佳境に入る。巨人、ヤクルトとの熾烈な首位争いが予想されるタイガース。開幕から先発マスクを被ってきた梅野の存在なしには頂点への道は見えてこない。そう確信させるゲームだった。
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