セ・リーグワーストの58失策
巨人と1ゲーム差でセ・リーグ首位を走る阪神。チーム防御率3.37はリーグ2位、先発は青柳(防御率1.79でリーグトップ)を筆頭に安定しており、現在は調整中だが抑えには守護神のスアレス(25セーブでリーグトップ)が控えている。目立った大型連敗もなく、これまで危なげない戦いを積み重ねてきた。
しかし、唯一の不安要素と言えるのが、「守備」だ。8月16日現在、失策数は58でリーグワースト。5位の広島が47であることを考えても、かなり多い印象である。
オリンピック中断期間明けの12日の広島戦でも大山悠輔の悪送球が失点につながった。岡田彰布政権の2005年以来16年ぶりのリーグ制覇を狙う阪神にとって、これから優勝争いが熾烈を極めるにつれ、ひとつの失策が命取りになりかねない。
優勝した2005年はリーグワースト2位の70失策
2005年シーズンの阪神は70失策でリーグワースト2位だった。2位の中日に10ゲーム差をつけ、圧倒的な力を見せつけたのだが、決して「堅守」が売りのチームでなかったことが分かる。
失策数の主な内訳は、この年打点王に輝いたサード今岡誠が14、セカンドの藤本敦士が11、プロ2年目で全試合出場したショート鳥谷敬が10、ファーストのアンディ・シーツが8だった。
失策数が多かったとは言え、今岡は打率.279、29本塁打、147打点と大車輪の活躍。主に2番を打っていた鳥谷も、打率.278、9本塁打、52打点をマークした。岡田監督が就任当初、ショートのレギュラーだった藤本敦士をセカンドにコンバートさせてまで、スタメンに据えた逸材である。その後の鳥谷の活躍ぶりは言及するまでもない。広島から移籍1年目だったシーツも打率.289、19本塁打、85打点の好成績を残した。
今岡は当時31歳、鳥谷は24歳。中堅、若手、助っ人外国人がかみ合い、チームに勢いがあった。
大山は今岡、中野は鳥谷になれるか
翻って、今シーズンの阪神である。大型新人の佐藤輝明や助っ人のマルテ、サンズが打線を牽引している。
失策数58の内訳は、4番のサード大山悠輔が8、ドラフト5位ルーキーでこれまで68試合に出場しているショート中野拓夢が13と多い。143試合で換算すると、シーズン終了時の失策数は大山が約15、中野は20を超える。
一方、2005年の今岡と鳥谷同様、大山と中野は打線の中で欠かせないピースになっていることも確かだ。大山は打率.251、13本塁打、46打点。中野は混戦だったチーム内の遊撃手争いから一歩抜け出し、打率.274、1本塁打、17打点と1年目ながらシュアな打撃を見せている。
大山、中野ともに失策数は多いが、2005年の同じポジションのレギュラーだった今岡、鳥谷とて同じである。大山はプロ5年目の26歳、中野はプロ1年目の25歳と、当時の今岡、鳥谷と年齢、キャリアも近い。
長いシーズンを戦い抜くためには、レギュラーの固定化は必須だ。大山と中野は優勝シーズンの今岡と鳥谷のように、失策を重ねながらもバットでカバーできるか。激戦必至の後半戦におけるキーマンだろう。
2011年の中日はリーグワースト83失策で優勝
2005年の阪神以外に目を向けると、2011年の中日はリーグワーストの83失策を記録しながらセ・リーグを制覇している。広島も2017年は71、2018年は83といずれもリーグ4位ながら2連覇、3連覇を果たした。エラーが多くても、優勝するチームは優勝しているのだ。
エラーが少ないに越したことはない。修正できることは早急にすべきだ。ただ、悲観ばかりしていても仕方がない。昨季28本塁打の大山は後半戦3試合で早くも3本塁打を放っている。大山、中野が、2005年の今岡、鳥谷になってくれることを期待しよう。
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