入団1年目は基礎からフォームづくりに専念
2019年ドラフト7位で西武に入団した上間永遠。高校卒業後は、在籍1年でNPBを目指せるという理由で独立リーグを選択した。徳島インディゴソックスでのルーキーイヤーでいきなり最優秀防御率のタイトルを獲得し、投手部門のベストナインにも選出。そして当初の目標通り、高卒1年目でNPB入りを果たし、今季は嬉しい一軍初勝利もあげた。
「独立リーグ時代、疲労が溜まってきたときに球速が落ちて、それをかばおうと体が突っ込み、腕だけで投げてしまっていた」というフォームを、入団当初から青木3軍投手コーチと基礎から見直し、体の使い方、力の伝え方に重点をおいて、フォームの修正に取り組んだ。
昨年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で練習時間も限られていたが、寮生だったことが幸いし、隣接するトレーニングセンターで練習できたことが大きい。2020シーズンが開幕してから2週間ほどで投げられる状態まで仕上げられたのは「練習の中でやってきたことの成果だと思う」と振り返る。
入団1年目は体を作りながらのシーズンだったため、ファームで9登板にとどまったが、上間本人は「体を使って投げるという基本の練習ができたので、意味のある1年目だったと思います」と納得したシーズンを過ごすことができたことを強調した。
プロ初勝利も目指すは5勝
プロ2年目の春季キャンプはA班に抜擢されたが、驚きの方が大きかった。
「なんでだろう?って思いましたけど、不安はなかったですね」と自信を覗かせることができたのは、昨年の土台作りがあったから。春季キャンプでの大きな目標は、1年通して投げられる体作りをすることだったが、「キャンプ終盤には登板の機会もあったので、そこから開幕ローテに入りたい気持ちが強くなりました」と日に日に鼻息が荒くなっていった。
今季の開幕前に立てた新たな目標は「1年間一軍で投げること、ローテをしっかり守ること」。日程上5人でまわった開幕ローテには入らなかったものの、今季初の6連戦の中で先発投手としてそのベールを脱いだ。
一軍帯同を経験して「一軍の選手は自分でしっかり考えて、こうしたい、これやりたい、と自分からコーチに話をしていますし、先輩投手と試合を見ながら話すことがありましたが、見た目は大胆ながらも、細かいことを考えているんだと勉強になりました」と新たな気づきがあったという。
上間自身、“人に聞く”というよりは、“見て盗む”タイプ。キャッチボールをしながら「体の使い方が上手いなぁ」と感じたり、実際の試合をみながら「体重移動が上手だなぁ」と観察して、それを自らのものにしていくのが上間のスタイルだ。
待望のプロ初勝利を挙げた後は、悔しい登板が続き、6月8日からファームで練習を重ねる日々。「今はフォーム固めに重点を置いて練習しています。ケガをしないフォーム作りというのを意識していますが、体重移動がうまくできていないので、もう少し頑張らないといけないです」と課題を口にする。ブルペンで自らの映像を見ながら、投球フォームを確認して投げ込む日々だ。
数字の目標を聞くと「ファームではそこまで考えていないです。一軍で5勝はしたいです」と言い切った。「いつ1軍に呼ばれてもいいように、今はファームでいい状態で投げられています。引き続きケガをしないように注意しながら、その中でもまだまだ成長できるところはあると思うので、先輩たちをよく見て吸収していきたいと思います」。
そう謙虚に話す上間だったが、人一倍強い向上心と貪欲さを持つその目の奥にはギラギラと光るものを感じさせられる。再び一軍のマウンドに立ち、これまでとは違った姿を見せるんだという秘めたる決意を、思いっきりマウンドで表現してくれる日を楽しみにしたい。
(写真は西武ライオンズ提供)
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