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オリックス・宮城大弥が球界屈指の左腕であることを示す数字

2021 6/19 06:00浜田哲男
オリックス・バファローズの宮城大弥ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

日本球界屈指の左腕に

11年ぶりの交流戦優勝を成し遂げたオリックス。リーグ戦の順位も交流戦前の5位から3位に上昇し、首位の楽天とも2ゲーム差に迫った。そんなチームをエースの山本由伸とともに牽引したのが、19歳の左腕・宮城大弥だ。

同僚の山本に次ぐ防御率2.31はリーグ2位で、勝利数6(1敗)もリーグ2位。奪三振率9.90、被打率.164、1イニングあたりに何人の出塁を許したかを示すWHIP 0.84はリーグトップと文句のつけようがない好成績を残している。

6月16日発表の東京五輪日本代表には選出されなかったが、この若さでもはや日本球界屈指の左腕と言っても過言ではないだろう。

変幻自在の投球で打者を幻惑

登板する試合では安定した力を発揮している宮城だが、本拠地で先発登板となった6月9日の巨人戦での投球は圧巻だった。

初回を三者凡退とテンポ良く幸先も良いスタートを切ると、7回を投げて1安打1失点、自己最多の13奪三振の快投を見せ、チームに勝利を手繰り寄せた。7回2死から岡本和真にソロ本塁打を浴びるまでは無安打投球という圧巻の投球内容で、ノーヒットノーランの期待も抱かせた。

特筆すべきは3回。若林晃弘から始まる右打者3人を、見逃し三振に斬ってとった。制球力を活かしたクロスファイアを基軸に、内角に食い込むような軌道を描くスライダーや、外角のボールゾーンからストライクゾーンに曲げるスライダーが冴え、打者を手玉にとった。

主な持ち玉はスライダー、チェンジアップ、カーブの3種類だが、スライダーの球速や軌道を微妙に変える技術もあり、打者から見れば3種類以上の球種がある感覚だろう。直球を含むどの球種でも腕の振りが一定のため、打者は惑わされる。

スライダーの被打率は.169

投球割合を見ると、直球(44.2%)の次に多いのがスライダー(30.5%)。続いてチェンジアップ(12.9%)、カーブ(11.2%)の順だ。

スライダーは打者の左右関係なく多投しているが、特に左打者に対しては、直球(44.5%)とほぼ同じ割合でスライダー(39.4%)を投じている。ソーン別のデータを見ると、左打者の外角中程(27%)と外角低め(28.7%)に配球が集中しており、両方のゾーンの被打率はともに1割台。外角を突く直球と外角へ逃げていくスライダーが機能していることがわかる。

スライダーの被打率は.169。同球種の割合が多い左腕の先発投手で比較すると、宮城の被打率はトップだ。

スライダーの割合が多い左腕・先発投手ⒸSPAIA


左打者にはほとんど投げておらず(0.8%)、右打者に多投しているのがチェンジアップ(18.8%)。奪空振り率が22.9%と高く三振が取れる上、緩急自在の宮城の投球に幅を持たせている。

時折投げるカーブも効果的。割合が11.2%と少ないこともあるが、被打率は.054と低く、ここぞという場面で投げている印象だ。9日の巨人戦では、岡本に対してカーブで体勢を崩して三振を奪った場面があったが、追い込むまでは直球とスライダーでカウントを稼ぎ、最後は意表をつくカーブでしとめた。

マウンドでの落ち着きや洞察力は、とても19歳とは思えない。オリックスが25年ぶりのリーグ優勝を果たすためには、山本と宮城を中心とした先発投手がしっかりとローテーションを守り続けることが欠かせない。そして、同じ左腕の楽天・早川隆久との新人王争いもますますヒートアップしていくだろう。

シーズンが終わった時にどれくらいの成績を残し、いくつのタイトルを獲れるか。今後も宮城の投球から目がはなせない。

※2021年6月16日試合終了時点

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