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西武・平良海馬が160キロを投げられる4つの要因、パワーだけではない理想のフォーム

2021 6/30 11:00中村タカシ
西武・平良海馬ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

38試合連続無失点の日本記録に並ぶ

西武・平良海馬が6月28日の西武戦で、藤川球児(阪神)の持つ38試合連続無失点の日本記録に並んだ。藤川はシーズン途中からの記録だったため「開幕から」という条件をつければ、平良はすでに日本記録を更新中だ。

以前の日本記録保持者は中日・田島慎二。2016年の開幕から31試合連続無失点を記録していた。今季は広島のルーキー栗林良吏とともに連続無失点を継続していたが、栗林は6月13日のオリックス戦で初失点し、22試合でストップ。今後は平良の「独り旅」がどこまで続くか注目される。

ちなみに連続イニングの無失点記録は、金田正一(国鉄)が1958年にマークした64.1イニング。平良は6月29日現在、37イニング連続無失点なので、まだ先は長い。

ヒップファーストの馬力ある投球フォーム

平良のイメージは、身長173cm、体重100kgの逞しい体格から繰り出される最速160km/hの豪速球だろう。体格の良さから速い球が投げられると思われがちだが、実は投球フォームが大きく関係している。

まずヒップファーストである点。平良は基本クイックで投球しているが、クイックはお尻から体重移動を始められるメリットがある。ヒップファーストによって体重移動時の体の開きを抑え、力を分散させずに投げられる。

2つめは右足の蹴りが強い点。蹴りを強くするには、右足にギリギリまで体重を残しておく必要がある。左足着地目前で右足から左股関節へ一気に体重移動させることによって、強い蹴りを使うことができるのだ。平良はプレートを強く蹴ることができているため、球速アップに繋がっている。

3つめは左足着地まで上半身が開かないところだ。速い球を投げるには、骨盤の並進運動をキャッチャー方向へ一直線にさせることが重要である。だが、骨盤が前足股関節へ移動し切れないまま上半身が開くと、エネルギーを十分に使うことができず球速が落ちてしまう。平良は左足着地まで上半身が一切開かず、骨盤の並進運動がスムーズなためリリースにパワーを集約することができている。

4つめは柔軟性がある点。平良は力でボールを投げるイメージが強いが、肩甲骨の可動域や股関節の柔軟性が優れているところも豪速球に繋がっている。右手がトップの位置まで上がった時、両肩の肩甲骨を最大限収縮できているため、腕をムチのように使えるのだ。

また股関節の柔軟性も優れており、広い歩幅でも左足股関節へ骨盤をスライドさせることができる。柔軟性によって発達した筋肉をフルに使えているため、速い球を投げることができるのだ。

東京五輪でも期待

平良は東京五輪の日本代表24人にも選出された。開幕から続いている無失点記録を稲葉監督は高評価。東京五輪でも持ち味である強いメンタルと豪速球を武器に、ピンチの場面や僅差の場面での救援が期待される。

野球では沖縄県勢初の五輪メンバーとして、故郷から熱い期待が寄せられている。平良にとっては貴重な経験となるだろう。

まだ21歳。国の威信をかけた戦いが今後の野球人生に活きることは間違いない。将来のプロ野球界を引っ張っていく投手の1人として、今後も注目していきたい。

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