既にデビューを果たした大卒野手9人
2021年シーズンも3週間ほどが経過し、各球団とも新人選手の活躍がクローズアップされることが増えてきた。阪神の佐藤輝明は開幕から本塁打を量産、DeNAの牧秀悟は勝負強い打撃でチームを牽引している。楽天の早川隆久は既に2勝を挙げ、広島の栗林良吏はクローザーを勤めている。
投打ともにハイレベルな新人が目立つが、特に注目したいのは大卒野手で、今年は当たり年とも言えるほどメンバーがそろっている。4月20日時点で一軍公式戦に出場したのは、牧と佐藤をはじめ、元山飛優、並木秀尊(ヤクルト)、矢野雅哉(広島)、佐野如一(オリックス)、若林楽人、渡部健人、ブランドン(西武)の9人だ。
彼らの活躍にフォーカスしつつ、少し気が早いが野手新人王の可能性に迫りたい。
牧と佐藤ら4選手がレギュラー定着
開幕からスタメンに定着した牧と佐藤は規定打席を維持し続け、特に牧は打率、安打、本塁打、打点、OPSなど多くの項目で新人トップを走り、リーグ全体でも上位につけている。外国人選手の復帰により本職の二塁に戻り、打撃に好影響を与えることができるか。
佐藤は打率と出塁率に課題があるが、期待されていた本塁打は順調に伸ばしている。盗塁も決めるなど身体能力の高さを発揮しており、ここからどうアジャストしてくるのか見物だ。
西武は既に3人の野手がデビューを飾っている。渡部、ブランドンは期待されていた長打力を、若林は走攻守で高いレベルのパフォーマンスを発揮。驚くべきことに既に3人とも本塁打を放っており、新人3人が開幕10試合目までに本塁打を放ったのは、1956年の南海(穴吹義雄、長谷川繁雄、寺田陽介)以来65年ぶりで、ドラフト制後では初めての快挙だ。
ヤクルトでは元山がショートのレギュラーに定着しつつあり、並木は快足を活かし、代走・守備固めでチーム内でのポジションを築きつつある。
オリックスの佐野は、育成5位指名ながらも開幕前に支配下契約をつかみ取り、開幕一軍入り。初安打を前に二軍落ちとなったが、球団の期待は高い。広島の矢野は打席数こそ少ないが、途中出場で着実に出場機会を掴んでいる。
100試合・OPS.720・130安打がライン?
1996年以降の25年間で生まれた新人王49人のうち、野手は15人(2000年パ・リーグは該当者なし)。仁志敏久、青木宣親ら錚々たる名前が並ぶが、意外なことに大卒1年目での獲得は髙山俊と京田陽太のみ。それだけ大卒野手にとってハードルの高いタイトルなのだが、偉大な先人たちはどれほどの成績を残してきたのだろう。
多少のバラつきはあるが、概ね以下のことがポイントになりそうだ。
(1).100試合以上出場・規定打席到達
(2).打率.280・OPS.720
(3).130安打
(1)については、まずこれだけの出場機会は得なければならない。小関竜也と松本哲也は規定打席未満で獲得したが、100試合以上には出場した。
質的部分では(2)が基準となりそうだ。しかし、金城龍彦のように打率.346で首位打者を獲得した選手もいれば、村上宗隆のように.231でも本塁打を量産した選手もおり、絶対的なものではない。
量的部分では(3)が一つの目安になる。打点・本塁打・盗塁などは選手の特性で大きく変わるが、安打数は絶対に必要。どれだけ守備が上手くても、打てなければスタメンで出られない。そういった意味でも必要な数字と言える。
既に2020年の新人本塁打数はクリア
これらを踏まえた上で今年の大卒新人の成績を見ると、「行けるのでは?」と思わせてくれる選手が多い。そして、現時点で最も新人王に近いと考えられるのが牧秀悟だ。仮に今のペースを維持できれば、新人王どころの騒ぎではない。多少数字を落としたとしでも、この基準は越えてくるのではないかと期待させるだけのパフォーマンスを見せている。
佐藤は確実性に課題があるが、村上宗隆のような形でのタイトル獲得は充分あり得る。2人には最後までレギュラーを離さず、打率2割台後半・30本塁打・80打点達成を期待したい。また、西武の若林も現時点で出場機会こそ2人には劣るが、素晴らしいパフォーマンスを見せている。規定打席に到達した上で、打率3割・10本塁打・30盗塁を達成できれば面白い。
もちろん、これを上回るような成績を早川や栗林ら投手陣が残す可能性もある。そこで最後に、野手新人王に期待したくなるデータを紹介したい。過去10年間の全新人野手が放った本塁打数は平均22本。最少は2011年の3本で、最多は2019年の41本だ。今年は既に15本と、2020年の11本を超えている。
この数字だけを見ても、近年では稀にみるスラッガーの当たり年といえる。新人王はもちろん、この先何年間も一線級で活躍するような野手が、一人でも多く出ると期待せずにはいられない世代だ。
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