滑り出しは好調も不振に陥る
21試合を消化し、11勝7敗3分け。4月18日試合終了時点で、ソフトバンクと同率でリーグトップと幸先の良いスタートを切った楽天。今季、そのリードオフマンを任されているのが辰己涼介だ。
開幕戦で初球をとらえて本塁打を放つなど滑り出しは良かったが、15日のロッテ戦の第1打席で二塁打を放った後は、17打数0安打とめっきり当たりが止まっている。しばらくは打率3割以上をキープしている時期もあったが、現在は.273(出塁率は.333)。本塁打はリーグ2位の5本、長打率はリーグ3位の.523をマークしているが、リードオフマンとして肝心の出塁ができていない状況だ。
昨季、楽天はトップバッターを固定できなかった中で、今季は辰己がその役割を果たしてくれると期待が高まっていた中での失速。辰己の状態の良し悪しがチームの攻撃力に大きな影響を与えるだけに、早いうちに不振から脱却したいところだ。
ゾーン別打率から見えた課題
今季は逆方向への強い打球が目立つなどパンチ力が際立っており、アウトになっても平凡なフライではなくライナー性の打球が多い。打撃が進化していることは確かだが、ゾーン別の打率はどうだろうか。
SPAIAのゾーン別に打率を見ると、内角高め(打率.167)と外角低め(打率.167)を特に苦手としている。ただ、これらのコースはどんな打者でも率が低くなりがちなところ。問題は真ん中コースの打率が一様に低調なこと(真ん中高め.267、真ん中.250、真ん中低め.250)。これらのコースの球を打ち損じているようだと打率は上がっていかない。
その一方、内角中程は.333、内角低めは.455、また外角高めは.400と、難しいコースをさばく器用さがある。真ん中に来る球をとらえる確率が上がれば、相手バッテリーも攻め方が難しくなるだろう。
各チームのマークが厳しくなり、中途半端なスイングで空振りしたり、凡打したりするケースが散見されるようになった。持ち前の思い切りの良さを消さずに復調していけるかどうかが、今後のポイントになる。
トップバッター定着へ意識したいこと
4月10日のソフトバンク戦では、0-7と7点のビハインドから一時は8-7と大逆転。その突破口を開いたのは辰己だった。7点を追う3回に高橋礼の90kmのスローカーブを見事にとらえると、打球は右翼席へ飛び込む5号ソロ。石井一久監督も「たかが1点かもしれないが、辰己のホームランが勇気を与えてくれた」と試合後に称賛したように、この一発が逆転への口火を切ることとなった。
同試合で辰己は4打数3安打3打点と大当たり。チームの切り込み隊長として打線に火をつけた。石井監督は「長打よりも出塁を」と釘を刺していたが、トップバッターに長打力があると、相手バッテリーは安打や四球などによる出塁だけでなく、本塁打も警戒しなければならず、非常に厄介だ。
打球方向データを見ると、右翼と右中間が24%で最も多く、次に左中間が21%。中堅は17%、左翼は14%と少ない。直球に振り負けずに引っ張る打球が多いのも良いが、中堅から逆方向への意識を高めることで、課題の出塁率も向上していくはずだ。
辰己がシーズンを通じ、走攻守で高いパフォーマンスを維持できるかどうかが、チームの浮沈に大きく関わるだろう。
※数字は2021年4月18日試合終了時点
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