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巨人・戸郷翔征3年目の大車輪の活躍へいきなり天敵と試金石

2021 3/27 06:00占部大輔
巨人・戸郷翔征ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

新人特別賞の投球を支えた“ウルスライダー”とフォーク

昨季、開幕ローテーション入りを果たし、チーム2位となる9勝を挙げ、防御率2.76で新人特別賞に輝いた巨人・戸郷翔征。広島・森下暢仁との新人王争いでは一歩及ばなかったが、飛躍のシーズンとなった。

3年目の今季もエース・菅野智之と共に先発の柱として期待がかかっている。弱冠20歳の右腕の投球を支えている変化球がある。「ウルスライダー」と呼ばれるスライダーだ。

ウルスライダーは戸郷の母校である聖心ウルスラ高にちなんで付けられたもので、独特な縦変化をする大きな曲がりのスライダー。昨季は投球全体の29.0%を占め、10%を超えていれば優秀とされる空振り奪取率は16.9%を記録した。被打率も.231と優秀で、三振の28.3%はこのボールで構成されている(SPAIA参照=https://spaia.jp/baseball/npb/player/1800028)。

巨人・戸郷翔征の球種別投球割合


背番号20の投球を支える変化球は、ウルスライダーだけではない。決め球のフォークも高い奪三振能力に大きく貢献している。

フォークは投球の19.4%を占め、三振の30.2%を構成している。何よりも圧巻なのが、空振り奪取率26.1%である。フォークを投じた時、打者は3割近い確率で空振りしていると考えると、ウイニングショットとして申し分ない数字であることが分かる。

さらに被打率.175で被本塁打0本という数字も見逃せない。高い確率で打者を抑えることができており、決め球としてこの上なく機能していると言える。

投球の軸となる切れ味抜群の2球種、今季の仕上がりはどうなっているのだろうか。

オープン戦で手応え、完璧に近い仕上がり

今季のオープン戦を終えた戸郷は、先発3試合で14回を投げ、防御率1.29、奪三振16個、奪三振率10.29と好成績を収めた。

オープン戦最終登板となった20日の東京ドームでの楽天戦では、3回無失点、3奪三振の圧巻のピッチングを披露した。球数はわずか39球で、ストレートの最速は151km/hをマーク。スライダーで凡打を稼ぎ、決め球のフォークでしっかり三振を奪う理想のピッチングだったのではないだろうか。

試合後、本人も「完璧に近いんじゃないかと思う」とウイニングショットがしっかり機能していることに手応えを感じていた。宮本投手チーフコーチも「10年選手のようなピッチング」と舌を巻いた。

開幕ローテーションの大役から大車輪の活躍へ、期待の3年目右腕は準備万端だ。

昨季1勝3敗、防御率6.75の“天敵”DeNA

開幕2戦目の登板となる戸郷の最初の相手は、昨季最も打ち込まれた天敵・DeNAである。

対戦成績は先発4試合で21回1/3を投げて1勝3敗、防御率6.75とかなり相性が悪い。被安打24本、被本塁打5本、被打率.293、16失点はいずれも対戦チームの中でワースト記録となっており、19奪三振もワースト2位の少なさだ。

ただ、昨季11打数6安打と苦手にしていた梶谷隆幸が巨人に移籍し、ネフタリ・ソトとタイラー・オースティンの両外国人が合流できていないことは、戸郷にとって追い風だろう。

昨季の苦手意識を払拭し、今季に弾みをつけることができるのか、初戦から戸郷のピッチングに注目したい。

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