昨シーズン奪三振の50%はカットボール
広島のエースとして君臨する大瀬良大地のウイニングショット・カットボール。投球割合の約30%はカットボールで構成され、奪三振の50%を占める球種もカットボールだ。昨季は怪我による離脱もあり、5勝4敗と不本意な成績に終わったが、カットボールの威力は健在だった。
今や、球界を代表するカットボールの名手として知られる大瀬良だが、第2のウイニングショットになり得る可能性を持つ球種がある。それは「カーブ」だ。
投球割合(SPAIA参照、https://spaia.jp/baseball/npb/player/1300057)は全体の9.4%だが、被打率は.087でウイニングショットのカットボール(被打率.211)を遥かに凌ぐ。また、10%を超えると優秀とされる空振り率も10.2%を記録しており、三振を取った球種の割合もカットボール、ストレートに次いで全体の3位にあたる7.9%だ。
他の球種と比べてみると、新球として話題になったシュートは、全体の15.9%を占めるものの被打率が.303。空振り率も4.8%で、三振を占める割合も2.6%にとどまっているため、ウイニングショットとしては使いづらい。
投球割合4.3%のフォークを見ても、被打率.421と打ち込まれており、シュートと同様ウイニングショットとしては考えづらい。
カーブと同じ投球割合9.4%のスライダーは、被打率.235、空振り率12.2%と優秀だが、三振の割合が2.6%なので、ウイニングショットと言うよりは、カウントボールとしての役割の方が適しているだろう。
あくまでデータ上の推測に過ぎないが、カットボールとカーブのコンビネーションを確立することで、大瀬良の投球の幅が広がる可能性は十分にある。
持ち味の制球力を活かした徹底したアウトコース攻め
大瀬良のもうひとつの武器と言えば、球界トップクラスの制球力だ。昨季、規定投球回に到達していないものの、BB/9(与四球率)は1.99を記録しており、セ・リーグ平均の3.30を大きく上回っている。
2019年シーズンでも、セ・リーグの規定投球回到達者のBB/9ランキングでトップとなる1.82を記録している。
昨季の大瀬良のヒートマップ(SPAIA参照)も圧巻だ。徹底してアウトコースを攻めており、特に右打者に対しては、アウトコース低めにボールを集め、ストライクゾーンとボールゾーンを出し入れするピッチングができているとわかる。右打者から逃げるように曲がるカットボールを得意とする大瀬良が、自分の持てる武器を最大限活かした結果だ。
課題は対左打者への投球
課題は左打者対策だ。昨季の両リーグの首位打者を見ても、セ・リーグがDeNA・佐野恵太、パ・リーグがオリックス・吉田正尚とともに左打者。大瀬良は左打者に対する被打率が高く、対左への投球内容の改善は重要事項のひとつであるのは間違いない。
ゾーン別のデータからは、左打者のアウトコースにボールを集めながら打たれていることがわかる。右打者よりも左打者に対して投球割合が増えているシュートとフォークが有効に作用していないと考えられる。
左打者と対戦する上で、シュートとフォークの球質改善も必要だが、前述したカーブの投球割合を増やすことも有効かもしれない。なぜなら、カーブもシュートとフォーク同様に左打者への投球割合が高くなっているが、しっかり打者を打ち取れているため、大瀬良のカーブに左打者は上手く対応できていないことがうかがえる。
今季、鈴木誠也とともにチームの新キャプテンとなった大瀬良。右肘の手術を乗り越え、エースとして一回り大きくなった姿を見せてくれることに期待したい。
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