近年は平均投球回、平均投球数とも減少傾向
年明け早々、桑田真澄が巨人の投手チーフコーチ補佐に就任することが発表された。15年ぶりに古巣に復帰した同コーチは理論派として知られるが、先発投手の起用法について次のようなコメントを出したことが話題となった。
「中6日空けてるから、僕は135球は投げてもらいたい。5、6回で降りるようでは先発の責任は果たせていないと思う」
実際、近年の先発投手は平均投球回、平均投球数とも減少傾向にある。完投数にいたっては2016年の93個から、昨季は55とわずか5年で半減近くになっており、9回を1人が投げ抜くケースは珍しいものになった。「オープナー」や「ショートスターター」といった新たな起用法が登場するなど、直近2年間でこの傾向は急速に進んでいる。
では昔に比べて投手のスタミナが落ちているのかいうと、単純にそうとも言い切れない。投手の力量を測る上で1つの指標になるストレートの平均球速は年々上昇。この5年間で平均145キロを超える投手の人数が倍増するなど、NPB全体の競技レベルがどんどん高くなっている。
以前に比べて力のある投手の総数が増えたことで、先発投手を引っ張るよりも継投でより力のある投手を送り出した方が勝利につながるため、継投策が増えている面もあるのだ。先発完投型の育成を掲げる桑田コーチだが、こうした現在の環境下でどういった起用法を見せるのか注目だ。
育成ドラフト出身の強打者に期待
一方、野手に目をやると近年は育成ドラフト出身選手の活躍が光る。昨季は球界全体で育成出身野手の出場数が過去最多を記録した。日本シリーズ4連覇を達成したソフトバンクでは、正捕手の甲斐や盗塁王を獲得した周東など育成出身選手がチームの中心に成長。常勝軍団の原動力になるなど、その存在感は年々増している。
中でも先述の周東に代表されるように、機動力にたけた選手の台頭が目立つ。巨人の松原や増田大、ロッテの和田など、盗塁ランキングの上位に多くの育成出身選手の名が連なった。身体能力に優れた選手を育成枠で獲得し、二軍や三軍で鍛えるのがトレンドとなっている。
今後、期待されるのが育成ドラフト出身の強打者の出現だろう。昨季はソフトバンクのリチャードがウエスタンで最多本塁打と最多打点を獲得。2019年には巨人の山下がイースタンの首位打者に輝くなど、新たな風が吹いている。
2020年のドラフト会議では初めて全12球団が育成ドラフトに参加し、過去最多の49人が指名を受けた。育成出身選手が球界を席巻するときが目前に迫っているかもしれない。
※文章、表中の数字はすべて2020年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:植松 大樹
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