攻守でチームを牽引
昨季は13年ぶりのリーグ2位でシーズンを終えたロッテ。その原動力となったのがレオネス・マーティンだ。10月21日の西武戦で左足首を捻挫しシーズン途中で離脱したものの、長打力に乏しい打線の中で存在感を発揮し、攻守でチームを牽引した。
2年目の昨季は104試合に出場して打率.234、25本塁打、65打点、OPSはリーグ6位の.866をマーク。守備では捕球してからスローイングまでの素早さと自慢の強肩で幾度となく相手の進塁を阻んだ。契約延長で基本合意した今季以降も、主軸として大きな期待がかかっている。
各指標がリーグ上位
マーティンがチームにとっていかに必要な存在であるかは、セイバーメトリクスの各指標を見ると明らかだ。四死球によってどれだけ出塁したかを示すIsoD(出塁率-打率)はリーグ2位の.148。打者が長打(二塁打以上)を放つ能力を示すIsoP(長打率-打率)はリーグ5位の.251をマーク。長打率は打者の打率が高ければ、単打だけでも長打しか打たなかった打者を上回ってしまう場合があるが、IsoPでは単打しか打たない打者の数値は0となるため、純粋な長打力を測れる。
パワーもスピードもある打者であることを示すPS(Power-Speed-number)にも優れ、リーグ4位の10.94をマーク。算出式は(本塁打×盗塁×2)÷(本塁打+盗塁)となり、この数値が大きいほどパワーとスピードを兼ね備えた打者ということになる。長打に加えて走力にも期待ができるマーティンはどの打順にも組み込みやすく、チームとして戦術の幅も広がる。
優れた得点貢献能力
さらに特筆すべきなのは、マーティンが得点貢献能力に優れている点。打者が1シーズンにどれだけの得点を生み出したのかを示す指標にRC(Runs Created)というものがある。RCには、長打力や出塁能力に加え、犠飛や犠打、盗塁といったOPSにはない要素も加味されているため、より精度の高い得点貢献能力がわかる。
しかし、RCは打席が多くなるほど有利になるため(打席数が多いほどRCを稼ぐ機会を得ていることになるため)、打席数の差が大きい選手を比較することには向かない。その一方、パワーヒッターやリードオフマン、小技が得意な打者など、タイプが異なる選手を平等に比較できる。この点が、他の選手の働きや打順に左右される打点や得点などと異なる。
マーティンはチームではトップ、リーグでは6位のRC 69.16をマーク。RCはチームの打者全員分の合計がチーム得点数となるため、昨季のロッテのチーム得点数461のうち、約69点をマーティンひとりで稼いだことになる。
チーム2位は中村奨吾の56.21、3位は井上晴哉の54.63ということからも、いかにマーティンが替えのきかない存在であるかということがわかる。つまり見方を変えれば、マーティンが離脱すると得点力はガタ落ちするということになる。安田尚憲や井上ら主軸を担う可能性がある打者はもちろん、打線全体の底上げは喫緊の課題だ。
コンスタントに活躍できるか
マーティン個人の課題もある。ゾーン別データを見ると、真ん中は打率.370、外角中程は.305と打ち込んでいるが、それ以外のコースは低めを中心に1割台が多く、得意なコースと苦手なコースの差がはっきりしている。穴が多いとバッテリーとしても攻めやすいため、苦手とするコースの打率を少しでも上げたいところだ。
また、打者ヒートマップを見ると、左投手は外角低めへの配球を徹底しており、右投手は全般的に低めに球を集めている傾向が顕著。実際、それらのコースでの空振り及び三振数が多くなっており、低めの際どいコースをいかに見極められるかがポイントとなるだろう。
昨季は8月に10本塁打を放つなど躍動した一方で、10月は月間打率.157と低迷。マーティンの不調はチームが失速する要因のひとつだった。昨季逃したリーグ優勝を目指すためには、マーティンが苦手なコースに対応し、シーズンを通してコンスタントに活躍できるかどうかが大きな鍵となりそうだ。
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