チーム唯一の2ケタ勝利
2020年のDeNAで大きな飛躍を遂げたピッチャーの1人が、2年目の大貫晋一だろう。開幕投手を務めた今永に加え、シーズン序盤から好投を続けていた平良らが離脱するなど、先発陣が苦しむ中で奮闘。自身6連勝を含む、チーム唯一の2ケタ勝利をマークした。今回はそんな若手右腕の投球スタイルを具体的に探ってみたい。
多彩な球種を操る大貫だが、中でも注目したいのが全投球の4分の1以上を占めたスプリットだ。先発でフォークやスプリットをこれだけの頻度で投じる投手は、NPBを見渡してもほとんどいない。
それでは、この大貫のスプリットにはどのような特徴が見られるのだろうか。
打たせて取るためのボール
フォークやスプリットといったいわゆる「落ちる」タイプの変化球は、その落差で打者から空振りを奪うことを目的としている場合が多い。しかし、大貫のスプリットのコンタクト率は75.4%と非常に高く、4回スイングさせても3回はバットに当てられていることになる。
大貫の場合、空振りを奪える球種としてスプリットを多投している、というわけではないようだ。
また凡打の内訳を見ても、三振は25%とリーグ平均を大きく下回る。その一方で、特筆すべきはゴロの多さだ。2020年はスプリットで59個のゴロアウトを記録。これはNPBの投手が投げるフォーク、スプリットの中で2番目の数字だった。
大貫のスプリットは、積極的に三振を狙う決め球というより、打たせて取るためのボールとしてその威力を発揮している。
リーグ屈指のグラウンドボーラー
投球の軸となるスプリット、さらにはツーシームやカットボールといった小さな変化球を操る大貫は、リーグ屈指のグラウンドボーラーだ。多彩な球種を織り交ぜてバットの芯を外し、内野の守備網に引っかける。決して広いとはいえない横浜スタジアムを本拠地とする大貫にとって、今の投球スタイルは長打のリスクを減らすひとつの策といえるだろう。
9月下旬にはチェンジアップを新たな持ち球として加えるなど、好調なシーズンの中でも挑戦を続けてきた大貫。巧みな投球術で若き先発陣をけん引する右腕は、今年もさらなる進化を見せられるか。そのピッチングに注目したい。
※文章、表中の数字はすべて2020年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:太田 健人
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