大学No.1投手
“大学No.1投手”の称号はだてではなかった。昨年のドラフト1位で広島に入団した森下暢仁。1年目から開幕ローテーション入りを果たすと、シーズンを通して安定した投球を続け、リーグ2位の防御率1.91をマーク。
大瀬良大地、ジョンソン、野村祐輔ら主力投手が軒並み故障や不振に苦しんだ中、エース級の活躍でチームを支えた。
そんな森下の最大の強みが、高い奪三振能力だ。今季は122回2/3を投げ、124個の三振を奪取。9イニングあたりの奪三振数は、最多奪三振のタイトルに輝いた中日・大野雄大をしのぐ数値だった。では、なぜ森下は1年目から三振の山を築くことができたのだろうか。
投球スタイルは「ゾーン内で勝負」
まず注目したいのが、ゾーン別の投球割合だ。今季の森下は、全投球の52.9%をストライクゾーンに投じていた。
これはリーグ平均を4ポイントほど上回り、リーグでも屈指の高さである。ストライクゾーンからボールゾーンへ曲げたり落としたりするよりも、ゾーン内で勝負するのが森下の投球スタイルなのだろう。
一方で、ゾーン内で勝負するということは、当然ながら痛打を浴びるリスクも高くなる。だが、森下のストライクゾーンへの投球は、空振りを奪ったり、ファウルを打たせたりする確率が高く、そもそも打球が前に飛びにくいのだ。
ゾーン内の投球がインプレー打球になったのは24.1%で、これは100投球回以上の投手ではリーグで最も低い数値だった。
背番号18を継承
投球の多くをストライクゾーンに集め、それを前に飛ばさせない。となれば、三振の数が増えるのは当然の帰結といえる。事実、今季の森下は124奪三振中、74個をストライクゾーンで奪っており、これはリーグでも最多だった。ストライクゾーンに投じる制球力と、ストライクゾーンで勝負できるボールの精度。その両方を併せ持つ森下は、やはり並大抵の新人ではない。
広島の背番号18といえば、現監督の佐々岡真司から、2度の沢村賞に輝いた前田健太(現ミネソタ・ツインズ)へと受け継がれてきた歴史がある。森下自身も、入団会見では「本当に重みのある背番号」と語っていたが、今季の活躍ぶりからは、そんなプレッシャーはみじんも感じさせない。偉大なエースナンバーの継承者は、来季もマウンドで躍動することだろう。
※文章、表中の数字はすべて2020年シーズン終了時点
企画・監修:データスタジアム
執筆者:秋山 文
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