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チェン・ウェインはロッテの救世主となる 一貫して変わらない抜群の制球力

2020 10/14 06:00浜田哲男
千葉ロッテマリーンズのチェン・ウェインⒸ千葉ロッテマリーンズ
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Ⓒ千葉ロッテマリーンズ

苦況のチームに希望の光

98試合を消化し、54勝42敗2分けでリーグ2位につけるロッテ。10月9日から行われたソフトバンクとの首位攻防戦で負け越したものの、2ゲーム差で食らいついている。

チーム状況は苦しい。苦手とする西武戦で勝ち越しを決めた直後にチーム内での新型コロナウイルスの感染拡大が発覚し、10月4日の西武戦で先発していた荻野貴司、藤岡裕大、菅野剛士らを含む主力が大量離脱。頼みだった中村奨吾、レオネス・マーティン、安田尚憲、井上晴哉らの主軸はソフトバンクの投手陣にほぼ完璧に抑え込まれた。

残り22試合。台所事情は苦しいが、暗い話題ばかりではない。急遽一軍に招集された藤原恭大や西巻賢二らが躍動。そして、14日の楽天戦での先発が予定されている新加入チェン・ウェインの存在だ。

点を取られない投手

積み上げた白星は日米通算95勝。2004年から2011年に在籍した中日時代は、当時の落合博満監督率いる常勝チームで左腕エースとして君臨。クライマックスシリーズ(CS)や日本シリーズの大舞台を経験しているほか、北京五輪、アテネ五輪の台湾代表に選出されるなど国際舞台での経験も豊富。実績は申し分ない。

中日入団当初は、球威はあるものの制球がなかなか定まらない印象があったが、テイクバックを小さくし腕に余計な力が入らないようなフォームに変えてからポテンシャルが開花。投球の際の体重移動もスムーズになり制球が安定した。

防御率1.54で最優秀防御率のタイトルを獲得した2009年は、19回のQS(6回3失点以内)をマーク。シーズン4回の完封勝利を達成するなど抜群の安定感を誇った。小さいテイクバックから繰り出す糸を引くような直球は、150km超であるとともに球の出所が見にくく面白いように空振りを奪った。

投球フォームと球の軌道の美しさが印象的で、とにかく点を取られない投手というイメージが強かった。NPBでの通算防御率2.59は特筆すべき数字だ。

MLBでもローテーションの柱として活躍

MLBでも輝きを放った。2012年にオリオールズに移籍すると、デビューイヤーに12勝(11敗)。2013年はシーズン序盤に右脇腹を痛めた影響で7勝(7敗)にとどまるも、2014年は16勝(6敗)を挙げて地区優勝に大きく貢献。続く2015年は11勝(8敗)を挙げ、リーグ7位の防御率3.34をマークするなど先発ローテーションの一角として活躍した。

2016年には、マーリンズとアジア人投手史上2番目となる5年総額8000万ドル(現在の相場で約86億円)で契約(1位はヤンキースと7年総額1億5500万ドル(約164億円)で契約した田中将大)。同年の開幕投手を任されるなど大きな期待を受けたが、左肘を故障し5勝(5敗)。以降も故障に泣かされ、マーリンズ在籍4年間では通算13勝(19敗)と振るわなかった。

2019年オフに放出されると、2020年2月にはマリナーズとマイナー契約を交わしたが、6月に自由契約となった。

一貫して変わらない抜群の制球力

MLB最後のシーズンとなった2019年の球種別割合を見てみると、直球の占める割合が48.1%、次いでスライダーが22.7%、カーブが22.4%、チェンジアップが3.8%、ツーシームが3.0%という構成。

直球は全盛期と比べると球速が落ちているが、それでも平均球速は147.1km。近年進化の著しい中日の左腕・大野雄大の直球の平均球速は146.2km、阪神の左腕・高橋遙人は145.9kmであることから、NPBでは速いレベルであることがわかる。

また全盛期と比べると、直球で空振りを奪うことが減少したのは確かだが、直球の奪空振り率は14.3%。大野が10.5%、高橋が5.2%、さらにはソフトバンクの左腕・リバン・モイネロが12.9%。MLBとNPBのデータ比較になり、日米では打者の性質が違うためあくまで参考といったところだが、悪い数字ではなくある程度の期待は持てる。

特筆すべきは、NPBおよびMLB在籍時代を通じて変わらない制球の良さ。9イニングあたり、いくつの四球を与えてしまったかを表す指標であるBB/9(与四球率)を見てみると、中日での5シーズンの通算成績(在籍8年間だが2004年、2006~2007年は一軍登板なし)が2.20。オリオールズとマーリンズに在籍した8シーズンの通算成績も2.28と圧巻の数値だ。

チームを押し上げる起爆剤に

イースタン・リーグで実戦登板する予定だったが、チーム内での新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けて2軍戦が中止。ZOZOマリンでシート打撃に登板して打者相手に投げはしたものの、14日の楽天戦は実戦なしでの登板となる。また、MLBのマウンド、ボールで投げてきたため、本番でアジャストできるかどうかという不安もなくはないだろう。

それでも、NPBでの豊富な実績と経験は有利に働くだろうし、テイクバックの小さいフォームにタイミングを合わせることも最初は簡単ではないはずだ。何よりも優勝争いをするチームの最後のピースとして起爆剤となってほしいというのが、首脳陣とファンの共通の願いだ。

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