夏場から「2番・右翼」でレギュラーに定着
巨人がセ・リーグ2連覇へ向けて邁進している。投手陣ではエースの菅野智之が開幕から破竹の快進撃を見せると、高卒2年目の戸郷翔征が急成長。中継ぎ陣も中川皓太に大竹寛、そして途中加入の高梨雄平が自身の役割をこなしており、いずれも防御率は2.00を下回っている。
野手陣は坂本勇人や丸佳浩、岡本和真らが打率こそ高くないものの、ここぞの場面では結果を残し勝利に貢献してきた。またベテランの中島宏之や高梨同様に途中加入のウィーラーも結果を出している。
特定の選手だけが結果を出しチームを引っ張るわけではなく、まさにチーム全員で勝ち進んできた。そのなかで見逃せないのが松原聖弥である。
松原は昨シーズンまでに一軍での出場はなかったが、今シーズンは夏場以降、スタメンに名前があるのが当たり前となった。それも下位打線ではなく上位打線である「2番打者」としてだ。
パーラや亀井らと打撃成績的に遜色なし
松原は仙台育英高校から明星大学を経て、2016年育成ドラフト5位で巨人に入団した4年目の外野手。高校ではチームは甲子園に出場したものの自身はベンチ入りできず、大学では首都大学野球連盟に所属しながらも在学期間中に一部でのプレー経験はない。
しかし、そんな松原が巨人の「2番・右翼」の定位置を掴み取ったのだ。パーラと亀井善行の故障、陽岱鋼の不振があったのは事実だが、松原の成績も決して見劣りするものではない。
スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)とOPSでは、飛び抜けた項目はないものの、パーラ、亀井、陽と実績十分な選手たちと遜色ない数字を残していることがわかる。松原は規定打席に到達していないので参考程度になるが、OPS.713は坂口智隆(.730/ヤクルト)とピレラ(.701/広島)の間になる。
それだけではなく、彼らにはない武器を松原は持っている。そのひとつが足だ。ここまで三塁打3本はチームトップの数字であり、7盗塁(1盗塁死)は増田大輝の17盗塁、吉川尚輝の8盗塁についでチーム3位という数字からもそれはわかる。
守備でも俊足を生かした広い守備範囲を誇り、ライトゴロを完成させる瞬時の判断力もある。その際に原辰徳監督が、「満塁ホームランに値するくらいのワンプレー」と手放しで褒めたほど。
攻撃面で見劣りせず、守備と走塁で先輩たちをしのいでいるのであればスタメンに名前を連ね続けているのも納得だろう。
大塚副代表は育成に舵を切ることを明言
巨人はこれまでの歴史で大型補強を幾度となく行ってきた。FAでは落合博満、広澤克実、清原和博、江藤智、小笠原道大、村田修一……。その他にもラミレスやローズといった外国人選手も獲得してきた。
それこそ1990年代後半には「4番打者コレクション」などと揶揄されたりもした。しかし、ここ最近は丸佳浩という目玉の獲得はあったものの、以前と比べて超大物選手の獲得はできていない。争奪戦に乗り出さないこともあれば、争いに敗れることもある。かつてほどの勢いは感じられない。
そんなさなか、ファーム施設を建設中ということもあるだろうが、先日大塚球団副代表が入団テストを行った際、「発掘、育成にシフトしている。可能性ある選手に切り替えたい。2年、3年後のドラフト1位がいる。囲い込みたい」と育成の方向性を打ち出した。その方向性を示している今、育成出身の選手が一軍の舞台で活躍しているのは追い風だろう。
松原と同じ育成出身の野手で、一足先にブレイクした増田は代走がメインだった。スタメンでの起用は2年間合計で13試合しかない。松原は松本哲也以来のレギュラー候補生でもある。松本や山口鉄也といった新人王を輩出した2000年代後半以降、目立った成果の出ていなかった巨人の育成ドラフト指名組が、昨シーズンから結果を出し始め一軍の戦力となってきた。これから先、巨人のイメージがガラリと変わるかもしれない。
※数字は2020年10月4日終了時点
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