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巨人の「機動力野球」復活へ 鍵を握る増田大輝、吉川尚輝、松原聖弥

2020 10/5 11:00青木スラッガー
読売ジャイアンツの増田大輝/吉川尚輝/松原聖弥ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

「足」で魅せる増田大、吉川尚、松原

独走状態が続き、いよいよ連覇が見えてきた巨人。今年のチームは菅野智之、岡本和真ら投打の主力がしっかり役目を果たし、盤石の戦力を築いている。その中で「足で魅せる」選手の活躍も目立っている。

まず目を引くのが、育成ドラフト出身高卒5年目の増田大輝だ。昨季チームトップの15盗塁をマークした走り屋は、今季も代走での出場がメインながら限られた機会で果敢に走る。登場してくれば相手バッテリーは警戒度マックスで臨んでくるが、その網をかいくぐってここまでリーグ2位の17盗塁。かつての鈴木尚広のように代走の切り札として原辰徳監督に重用され、攻撃の重要なピースとなっている。

二塁手の吉川尚輝も足は使える選手だ。これまで抜群の守備力を持ちながら怪我が多く、なかなかレギュラーに定着できなかったが、怪我から復帰した今季は打撃でもここまで7本塁打を放つなど成長を見せ、ようやく正二塁手の座を掴みつつある。上位の打順をキープすれば、まだ8個の盗塁数も自然と伸びてくるだろう。

さらにもうひとり、後半戦から存在感を見せているのが松原聖弥である。増田と同じく育成ドラフト出身のたたき上げ外野手は、大卒4年目となる今季、ようやく一軍出場デビュー。パーラの離脱をきっかけにスタメンに定着すると、攻守にスピード感あるプレーでチームに新たな風を吹き込んでいる。昨季はファームでチームトップの17盗塁を記録。もとから足には定評があったが、今季はすでに2本塁打を放つなど打撃が伸び、吉川との1・2番コンビも様になってきた。

意外にも「機動力野球」は巨人の伝統?

巨人といえば一時は各球団の4番打者をかき集め、圧倒的な重量打線を組んだこともあった。だがチームの歴史を振り返ると、伝統的に「機動力」を持っているチームだと分かる。

V9の時代はONの打力だけでなく、NPB歴代3位の579盗塁を記録した柴田勲や、通算200盗塁の高田繁を中心に足を絡める攻撃も得意とした。9年間の平均チーム盗塁数は112個。チーム盗塁数がリーグ3位以下になったことはなく、5シーズンはリーグトップと、機動力でも他球団を圧倒していたのだ。

V9時代のチーム盗塁数ⒸSPAIA


2012年から2014年にかけて3連覇を達成したときも、チーム盗塁数は102個(1位)、90個(2位)、102個(1位)と常にリーグ上位だった。若かった坂本勇人や長野久義(現広島)に脚力があり、2014年は西武から片岡治大を獲得するなど、打力だけでなく走れる選手もしっかり揃えていた。

それが、ここ数年の巨人は違った。ペナント2位で終えた2015年もチーム盗塁数はリーグトップの99個を残していたが、2016年から高橋由伸監督時代に入ると、ここから3年間は62個(4位)、56個(4位)、61個(6位)。2016年で代走屋の鈴木も現役引退し、積極的に走るチームではなくなっていたのである。

2010年代のチーム盗塁数ⒸSPAIA

コリジョンルールで高まる「機動力」の価値

機動力が落ち順位も低迷していた巨人とは対照的に、この間に圧倒的な機動力を誇ったのが3連覇を果たした広島である。もともと伝統的に機動力野球が得意なチームではあるが、特にこの3シーズンはすべてチーム盗塁数リーグトップと圧倒。二盗、三盗だけでなく、一三塁時のホームスチールも頻繁に仕掛けてセ・リーグ各球団の守備陣を悩ませた。

現在のプロ野球は、ちょうど広島が連覇に入った2016年からはじまった「コリジョンルール」により、それ以前に比べて機動力の価値が増しているのではないだろうか。捕手のブロックが禁止されてホームベース上でのクロスプレーが走者有利になり、積極的にホームを狙いやすくなった。こういった環境下では、走れる選手の重要性も高まってくる。

原監督が復帰して即、優勝を飾った2019年はリーグ2位の83盗塁までチーム盗塁数を戻した。今季も同じくらいのペースだが、力を伸ばしてきた増田大、吉川、松原といった選手の今後の活躍次第で、さらにチーム盗塁数は伸びてくるだろう。彼らの「足」が、今後の巨人の命運を握ることになるかもしれない。

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