健闘する中日投手陣
セ・リーグは巨人の独走で大勢が決まりつつある。CSが開催されない状況では、2位以下の争いは盛り上がりに欠けてしまうところだが、中日の動向からは目が離せない。9月を4位で終えた中日は、3位DeNAとわずか1.5ゲーム差。なにせ、7年間Bクラスが続いているというチーム状況。CSがないとはいえ、なんとかAクラス入りを果たすのとBクラスで終わってしまうのでは天と地ほどの差がある。
ここまでの中日の戦いを振り返ると、野手陣は高橋周平、アルモンテ、平田良介と攻撃の中心である主力に離脱が続き、得点力不足に苦しんだ。
一方、投手陣の働きには光るものがある。大野雄大が毎試合のように完投するスーパーエースとして覚醒し、移籍2年目の松葉貴大、プロ8年目の福谷浩司という昨季わずか1登板だった2人が主戦級に躍り出た。
リリーフは祖父江大輔、福敬登、ライネル・マルティネスの「勝利の方程式」が12球団でもトップクラスの安定感を誇り、ここ数年苦しんでいた又吉克樹、谷元圭介といったベテランも復活の気配を見せている。
若手は勝野昌慶がローテーションに定着。現在は離脱しているが序盤は大卒2年目の梅津晃大が好投し、育成契約出身のキューバ人右腕、ヤリエル・ロドリゲスはエース級のポテンシャルを示した。高卒4年目の藤嶋健人の成長具合も順調といえるだろう。
チーム防御率こそ現時点で昨季の3.72よりも高い3.83であり、劇的に数字がよくなっているわけではない。ただ中堅以降の頑張りと若手の成長と両方が見られ、期待を感じさせるシーズンになっているのではないだろうか。
かつての「投手王国」も近年は弱体化
かつての落合博満監督時代は「投手王国」の称号をほしいままにした中日。
リリーフでは浅尾拓也、岩瀬仁紀を中心に、先発も先日ロッテへ電撃加入したチェンら好投手を毎年しっかり揃え、アライバを中心とする鉄壁の野手の守りと投手有利のナゴヤドームを味方につけて圧倒的なディフェンス野球を展開した。
しかし落合監督退任後は年々投手力が弱体化。2018年にはチーム防御率4.36(リーグワースト)と、かつての投手王国は見る影もない〝投壊〟といえる状況にまで落ち込んだ。与田剛監督が就任した昨年から今年にかけては3点台後半の防御率に持ち直し、短期間で投手力の整備が進んでいるものの、それでもまだ黄金期の頃の防御率には遠く及ばない。
ただ、単純な防御率だけでなくいくつかの指標に注目すると、今の投手力への評価が変わってくる。
黄金期と現在をデータで比較すると……
表は2005年から現在までの中日の投手指標の推移を表している。対戦打者数に対する奪三振の割合である「K%」、四球の割合「BB%」、K%からBB%を引いた「K-BB%」、9イニングあたりの被本塁打数「HR/9(被本塁打率)」。三振、四球、本塁打はバックの守備力に左右されない、投手の責任のみによって発生するイベントであり、こういった指標に注目することでより純粋な投手の能力を測ることができる。
指標の推移をみると、まずK%は与田監督が就任した2019年から急激に上昇していることに気がつく。落合監督が就任したのは2004年からだが、データを確認できる2005年以降ではなんと黄金期の全シーズンを上回るK%だ。さらに今期もここまではさらに高いK%をマークしている。
BB%も昨年から順調に改善。黄金期より優秀という水準まではいかないが、この四球の数に対する三振の多さは優秀で、K-BB%は2005年以降で最高の数字だ。防御率には表れていないものの、この2年で投手力が劇的に伸びてきていることがうかがえる。今後の上がり目に期待大と言っていいのではないだろうか。
一方、明らかに課題として見えているのが被本塁打である。2005年以降でワーストのシーズン149被弾を喫した2018年から被本塁打率はあまり変わっていない。今季圧倒的な投球を見せている大野も被本塁打はリーグワースト2位の13本を喫しており、ローテ投手の柳裕也、松葉も被弾がやや多い。
チームとして被本塁打を減らすことができれば、「投手王国復活」も現実的になってくるだろう。成長著しい中日投手陣の今後を楽しみにしていきたい。
※成績は2020年9月終了時点
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