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ヤクルト・青木宣親の打棒に“異変”?燕の「安打製造機」が「スラッガー」に

2020 9/17 11:21青木スラッガー
今季キャリアハイともいえる打撃を見せているヤクルトの青木宣親ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

球界を代表する「安打製造機」の打棒に“異変”?

開幕から打撃好調を維持するヤクルトの青木宣親。左翼手の守備でも度々ハッスルプレーを見せ、また今年からは新たにキャプテンを務め、プレーとリーダーシップでチームを引っ張っている。そんな頼れるベテランのバッティングに“異変”が起きていることにお気づきだろうか。

2年前の日本球界復帰以来、「攻撃型2番打者」としてチームに貢献してきた青木だが、今季は主に3番を任されここまで打率.310をマーク。本塁打は9月12日の巨人戦で先発左腕の今村信貴から右翼スタンド中段まで飛ばした1発で村上宗隆を抜き、チームトップの13本目。さらに15日にも1発を追加し14本と、見事に中軸の役割を果たしている。

青木といえば、プロ野球史上に残る「安打製造機」である。現在の通算打率.325は歴代トップ。NPB 史上唯一となる2度のシーズン200安打を達成し、首位打者は現役最多の3度獲得。2012年から6シーズンプレーした大リーグでも各チームで1番や2番打者を任され、日本を代表するリーディングヒッターとして、数々の功績を残してきた。

そんな青木だが、今季は打者としての“タイプ”がこれまでとはやや異なっている。現在の青木の各打撃成績のキャリアハイと比較してみたい。

120試合制でも本塁打は38歳にしてキャリアハイを更新する勢い

青木宣親の今季、キャリアハイ成績比較ⒸSPAIA


まず目につくのが本塁打の多さだ。これまでは2007年の20本が最高だが、今季はすでに14本。まだ46試合を残しており、このまま順調にいけばキャリアハイを更新する可能性がある。今季は120試合しか試合数がないことを考えると驚異的なペースだ。

スラッシュライン(打率/出塁率/長打率)は.306(リーグ8位)/.410(3位)/.578(4位)。長打率が2008年の.529を大きく上回っており、リーグ上位の打率と出塁率をキープした上でこれまでにない長打力を発揮していることがわかる。

打率と出塁率が3度目の首位打者を獲得した2010年を超えることは難しそうだが、打者の総合的な指標であるOPS(出塁率+長打率)は、209安打と打率.358を残した2010年の.944を超える.988を記録。38歳にして、総合的には過去最高と言ってもおかしくない打撃を見せているのだ。

一般的には、優れた打者でも年齢的に衰えていくと、瞬発力がなくなって若いころのようには長打が期待できなくなると言われる。そこで円熟した技術を活かし、一撃必殺の打撃で走者を返す「代打の切り札」として晩年を送るパターンが多い。そんな中で、むしろ40歳を間近にして長打力がこれだけ伸びてきているのは、驚くべき進化だろう。

もう少し詳しくデータを見ていくと、IsoP(長打率-打率)の上昇値が際立っている。IsoPは「純粋な長打力」を表す指標で、この値が高いほど真の意味で長打力のある打者ということになる。過去最高は2008年に記録した.182(リーグ11位)だが、今季はリーグ5位の.272と異常とも言える数値をマーク。急激にスラッガータイプへ打撃スタイルがシフトしていることがやはりデータに表れている。

球界を代表する安打製造機から、スラッガーへと進化を遂げた青木。後半戦に差しかかる中でチーム状況は厳しいが、燕が誇るバットマンの打撃からは目が離せない。

※数字は9月16日終了時点

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