ベテランと若手は奮闘するも……
6月20日に開幕したプロ野球も折り返しを過ぎた。セ・リーグでは首位の巨人が独走体制を築きつつある。
巨人の野手陣を見ると、ベテランの亀井善行や中島宏之が結果を残し、中堅どころでは坂本勇人こそ不振だが丸佳浩が調子を上げてきた。若手では岡本和真が4番に座り、リーグ最多の本塁打を放っている。まさにベテラン、中堅、若手がうまく機能し、世代間のバランスが取れ一丸となって勝ち進んでいるように見える。
一方、苦しい状況が続くヤクルト。野手陣ではベテランと若手の活躍が目立つものの、本来チームの中心であるべく中堅どころが結果を出せていない。ベテランと呼ばれる35歳以上の選手、青木宣親や坂口智隆が「年齢なんて関係ない」と言わんばかりの活躍でチームを引っ張っている。
特に青木は打率3割を維持するだけにとどまらず、チーム最多となる本塁打を放っている。試合数の減少はあるが、13年前に記録したキャリアハイの20本塁打を超えそうな勢いだ。若手では20歳の村上宗隆が4番として君臨。その存在感は球界で屈指の存在となりつつある。
対して、苦しんでいるのが中堅どころ。開幕戦直前に戦線離脱した正捕手の中村悠平が一軍に戻ってきたのは8月20日のこと。いまだ打率1割台と調子は上がらない。また、山田哲人も少し上向いてきたものの、まだまだ本調子とは言えないのが実情。
そして川端慎吾。2015年のリーグ優勝時は、「攻撃型2番打者」としてチームを牽引し、首位打者にも輝いたツバメのプリンス。2016年こそ打率.302(420打数127安打)と結果を残したものの、それ以降は故障に苦しみ戦力になりきれていない。
今年もヘルニアの手術をした影響で、一軍に合流したのは7月に入ってからだった。
代打での立ち位置にも変化
川端は7月こそ打率.308(13打数4安打)、2打点と結果を残していたものの、8月は急降下。打率.053(19打数1安打)、打点0、選んだ四球もわずか1個だけと、安打製造機らしくない数字が並ぶ。9月に入ってもあたりは戻ってきておらず、いまだノーヒットが続いている。
それに伴い代打で起用される場面も変化している。象徴的だったのが9月2日、3日の阪神戦だ。9月2日の試合は両チーム譲らず延長戦へ突入した10回表、ヤクルト最後の攻撃の先頭打者は「9番・投手」の石山泰稚。当然、代打である。
この場面でコールを告げられたのは、川端と同じ左打者である宮本丈だった。この後、上位へと打順は回っていくことから、代打宮本の時点で川端の出番はなくなったに等しい。結果、宮本は安打を放ち、勝ち越しへの口火を切っている。
その翌日の試合にも川端は代打で出場している。しかし、代打川端がコールされたのは、2点ビハインドの3回表1死無走者の場面だった。試合の序盤、それも無走者という代打の切り札が起用されるような局面でないことは明らか。この2日間の起用法が、今の川端の立ち位置を如実に表している。
代打専任ではなくレギュラー争いへ
それでも守備につくことがほとんどできない川端は一軍に帯同している。ベンチからすると当然、代打だけでなく代走や守備固めでも起用できる選手のほうがありがたい。左の代打が手薄という事情もあるだろうが、高津臣吾監督をはじめとした首脳陣は、川端の持っている力を信じているのだろう。
現状を見る限り、川端の守る三塁と一塁は競争が激しく、そのうち1つは村上で埋まっている。今シーズン中のレギュラー奪回は厳しいと言わざるを得ない。それでも試合前のノックに加わり、わずか4試合ではあるが守備にもついた。本人もこのまま代打専任で終わるつもりはないはず。今シーズン中は難しくとも、来シーズンには再びレギュラー争いに加わりたいと思っているだろう。
今年10月で33歳になる川端。若手ではないが、ベテランと呼ぶにも少し早い。ここ数年の向かい風を背中で受けとめ追い風とし、前に進んでくれることを願っている。
「代打、川端」のコール前に鳴り響く登場曲、『悲しみなんて笑い飛ばせ』が流れたときに湧く手拍子の大きさを本人も感じとっているはずだ。「手拍子の大きさ=ファンの期待」と捉えてもいいだろう。
ツバメのプリンス川端に不可能なんてない。可能だらけさ。
※数字は2020年9月6日終了時点
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