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楽天強力打線を牽引するロメロは何が良くなったのか?

2020 8/18 11:00浜田哲男
東北楽天ゴールデンイーグルスのステフェン・ロメロⒸYoshihiro KOIKE
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ⒸYoshihiro KOIKE

期待以上の活躍

チーム得点数273、本塁打56本、打率.274はいずれもリーグトップ(2020年8月17日現在)。圧倒的な打撃力で首位争いを続ける楽天。その中軸を担っているのがオリックスから移籍してきたステフェン・ロメロだ。打率.321とハイアベレージを維持し、15本塁打、35打点、出塁率.392と期待以上の活躍を見せている。

オリックス在籍3年間で69本塁打を放ち、昨季は規定打席未到達も.305をマークするなど日本野球への対応力は年々向上していたものの、まさかここまでの数字を残すとは……というのが大方の見方ではないだろうか。もはや楽天打線には欠かせない存在となっている。

6月に月間打率.444という驚異的な数字を残しながら7月には月間打率.256と落ち込んだものの、8月は.333と盛り返している。これまでのOPS(長打率+出塁率)はソフトバンクの柳田悠岐に次いでリーグ2位の1.077。年俸は昨季から2億円以上ダウンした6500万円(金額は推定)であることを踏まえると、楽天としてはこれ以上にないコストパフォーマンスだ。

逆方向への意識と打率が向上

今季のロメロは甘い球を逃さない。8月2日のロッテ戦では4回に中村稔弥の外角の直球をとらえると、打球はバックスクリーン右へ一直線。7回には一時は勝ち越しとなるアーチを右翼席に運ぶなどマルチ本塁打。8月7日のソフトバンク戦でもロメロの打棒は止まらない。6回に東浜巨から反撃の2点本塁打を放つと、7回には高橋礼から3点本塁打を放つなどこの試合でもマルチ本塁打を放ちチームの勝利に貢献した。

打球方向別打率を見ると、レフト方向が.287、センター方向が.352、ライト方向が.438と全方向に満遍なく打球を飛ばしている。昨季の同打率を見ても、レフト方向が.307、センター方向が.310、ライト方向が.286と広角に打ち分けているが、今季は逆方向であるライト方向の打率が特に向上していることがわかる。

1軍の金森栄治打撃コーチは、「球をできるだけ引きつけて軸回転で逆方向へ打つ」という打撃理論を提唱しているが、金森コーチのアドバイスもロメロの打撃が向上した大きな要因のひとつかもしれない。球を引きつけるようになると、必然的にギリギリまで見極めるようになるため、ボール球にも手を出さなくなるという効果も期待できる。四球率も昨季の7.5%から今季は8.2%と改善傾向が見られる。

課題は得点圏打率と内角球への脆さ

対右投手の打率は.326、対左投手の打率は.314と投手の左右も苦にしないロメロだが、課題もいくつかある。まずは得点圏打率の低さだ。昨季の得点圏打率は.364と好機で強さを見せていたが、今季はここまで.239と振るわない。

内角球に対する脆さも課題だ。ゾーン別の打率を見ると、外角高めは.571、外角中程は.391、真ん中は.667、真ん中低めは.450と打ち込んでいるものの、内角高めは.167、内角中程は.267、内角低めは.250と打率が低下する。今後マークはますます厳しくなり、内角を突かれるケースも増えるだろうが、そこをいかに乗り越えていくかがハイアベレージを維持する鍵を握りそうだ。

楽天は打撃陣の層に厚みがあるため、相手バッテリーにとってロメロだけをマークすればいいというわけにもいかず、打順の前後の相乗効果によりキャリアハイも期待できる。また、ジャバリ・ブラッシュら代役が控えているため、比較的故障しがちなロメロを休み休み起用できることも功を奏しそうだ。

今や楽天打線の破壊力は12球団ナンバーワンと言っていいだろう。7年ぶりのリーグ優勝へ向けてひた走るチームには、この男の力が欠かせない。

※数字は2020年8月17日現在

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