昨シーズン苦しんだ小川泰弘が3連勝中
開幕から上位争いに顔を出し、7月12日に一時首位に立ったヤクルト。先発投手陣を見ると、来日2年目のスアレスが好投を続けている。スアレスは打たせて取るタイプの投手で、奪三振率は6.35と高くないが、3試合の登板で2勝0敗、防御率0.53と好成績だ。
直近の登板である7月7日の中日戦では、6回無失点ながら与四球7と不安定な部分ものぞかせたものの、ここまでは先発としての責任を十分に果たしている。
その2日後となる7月9日に登録抹消となったが、高津監督によると再調整とのこと。昨シーズンは故障に次ぐ故障で登板はわずか4試合のみということもあり、「また故障なのか」と不安視されたが、「(最短の)10日後に投げさせる」と高津監督はコメントしており心配はなさそうだ。
ライアンこと小川泰弘も粘りの投球で白星を重ねている。4試合で防御率4.63はやや気になるものの3勝0敗と貯金が3つ。7月11日の巨人戦では、初回に先制点をもらったその裏に2点を失い逆転を許すも、その後は立ち直り6回2失点と粘投。試合をしっかりと作り勝利をもぎ取った。昨シーズンは5勝12敗と大きく負け越したが、今年は勝敗を逆転させたいところだ。
昨シーズンは78回しか投げることができず、年間を通して戦力となることはできなかった移籍2年目の高梨裕稔も3試合で1勝1敗、防御率3.18と安定している。7月12日の巨人戦では2安打を放ち、打率.600と打撃面でも結果を残しているのは頼もしい。
一方、開幕投手に指名された石川雅規は苦しんでいる。開幕から2試合連続で勝利投手の権利を持っての降板だったものの、中継ぎ陣が打ち込まれ勝ちがつかなかった。それでも不平不満を漏らすことなく、味方を鼓舞する姿は頼れるベテランそのもの。粘り強い投球を続けていれば白星はついてくるはずだ。
2年目の清水昇が勝ちパターンへ「昇格」
中継ぎ投手陣では、2018年ドラフト1位右腕の清水昇が覚醒しつつある。2年目にして初となる開幕一軍の座を掴むと、ここまで圧巻の投球。すでに勝ちパターンへと「昇格」している。威力のあるストレートとツーシームを軸にスライダー、カーブを織り交ぜここまで失点は0。5ホールドを記録していることからも、大事なところで任されていることがよくわかるだろう。
2016年のドラフト1位左腕・寺島成輝も躍進している。7月7日の中日戦ではプロ初勝利をマーク。貴重な左腕として戦力になっている。思えば、春季キャンプで寺島はケースバッティング時にマウンドへ登るとき、小走りではなくほぼダッシュしていた。そんな男が戦力となりそうなのはファンとしても嬉しい限りだ。
昨シーズンはわずか1試合の登板に終わった中澤雅人も渋い働きを見せている。今シーズン初登板となった6月23日の阪神戦で1回無失点と結果を残すと、6月26日の巨人戦から3連投し1勝1ホールドを記録した。
その後も7月8日の中日戦では2回をパーフェクトピッチング。このように連投、回跨ぎと大車輪の活躍。昨シーズンの大半を二軍で過ごした35歳のベテランとは思えない投げっぷりでブルペン陣を支えている。
今シーズンから加入した長谷川宙輝もここまで9試合に登板。WHIP(1回に何人の走者を出すかを表す指標)は1.57とやや劇場型だが、防御率3.86と結果をはついてきた。この調子が続けば、他の投手たちとの兼ね合いもあるが勝ちパターンへの昇格もありえない話ではない。
昨シーズンの勝ちパターンでは梅野雄吾が11試合で5ホールド、防御率3.38とまずまずの内容。開幕戦で1回を投げきることができず、0.1回3失点と散々なスタートだったが、それ以降は落ち着きを取り戻している。
一方で不安なのがマクガフと石山泰稚である。ここまで両投手とも防御率は4点を超えており、盤石な体制とは言い難い。とくにマクガフは勝ちパターンからも外れてしまった。僅差の終盤ではなく、もう少し楽な場面で調子を取り戻してから、その先の起用を決めることになりそうだ。
このように、ここまでの戦いぶりを見ると、先発、中継ぎともに昨シーズンは戦力になっていなかった投手たちが奮闘しチームを支えているのである。そこに本調子ではない石山やマクガフ、そして石川といった実力者たちが本来の投球を見せることで歯車が噛み合えば、このまま上位争いを続けていってもおかしくはない。
※数字は2020年7月12日終了時点
【関連記事】
・最下位予想を覆す好調ヤクルト 4番村上宗隆中心に若手・中堅・ベテランが噛み合う打線は破壊力抜群
・ヤクルト・清水昇の勝ちパターン定着を期待 セ・リーグ新監督の下で活躍の場を見出した選手たち②
・プロ野球も黄金世代!躍進目覚ましい1998年度生まれの選手たち