巨人に連勝し7月12日に首位奪取
昨季最下位からの巻き返しを狙うヤクルトが7月11日・12日、巨人に連勝し首位に立った。そのなかで打撃陣を見ると確固たる主力、そしてそれを支える脇役たちがバランスよく結果を残していることがわかる。
特に、村上宗隆の独り立ちといっても差し支えないほどの活躍が大きい。球団史上最年少で開幕4番に座ると、2安打2打点と好スタート。その後も勢いが衰えることなく、OPS(出塁率+長打率)はリーグを代表する打者の基準となる「1」を超える1.058をマーク。鈴木誠也(広島)、岡本和真(巨人)のふたりに次ぐセ・リーグ3位の数値を残している。
また、ベテランの青木宣親、坂口智隆のふたりも順調な滑り出しを見せている。坂口はリードオフマンとしてセ・リーグトップとなる16四球を選び、出塁率.432と昨シーズンの故障からみごとに復活を遂げた。青木もOPSは1.001と1を超えており、7月9日の中日戦ではビハインドの9回に代打で出場すると、逆転劇の口火を切るフェンス直撃の二塁打を放った。
1年前の同じ中日戦で延長12回裏、あとひとりの場面で代打サヨナラ本塁打を放った集中力は微塵も衰えていないようだ。また、7月11日の試合では球団通算8000号となる一発を放ち存在感も見せている。
山崎晃大朗は規定打席未到達ながら得点圏打率.444
山崎晃大朗や西浦直亨といった主役を支える中堅の選手たちも健在だ。両選手とも開幕スタメンを掴むことはできなかったが、すでにチームに欠かせない戦力として機能している。
山崎はどちらかというと本塁打や長打で塁上の走者を還すのではなく、その前で出塁するチャンスメイク型の選手。しかし、ここまではチーム4位タイとなる11打点を稼いでおり、得点圏打率.444(規定打席未到達)とチャンスに強い。6番をメインに3番、5番とクリーンナップを任される試合もありチャンスメイクではなく、走者を還す役割をしっかりとこなしている。
もともとパンチ力には定評のあった西浦は、6月25日の阪神戦ではサヨナラ本塁打を放つなど、ここまで5本塁打といつも以上に存在感を発揮している。故障が多い点が気になるものの、遊撃のエスコバー、三塁起用が本線だった村上とどう共存させていくのかが、気になってくる活躍ぶりだ。
ここ数試合コンディション不良もありスタメンから外れているが、7月12日の巨人戦では代打で出場。大きな故障ではないようだ。
山崎や西浦が好結果を残すことで村上ら主力選手がより生きてくる。昨シーズンのオフにバレンティン(現ソフトバンク)が退団したことで、得点力の低下が懸念されていたがここまでは問題ない。
山田哲人に代打の切り札・荒木貴裕が不振
だが、気がかりな点もある。ひとつは山田哲人の調子が上がらないことだ。開幕から2試合連続本塁打を放ち、絶好のスタートを切ったものの現在の成績は少し物足りない。高津臣吾新監督の「2番山田構想」も本人の結果が伴わなければ、うまくいったとは言えないだろう。
代打の切り札である荒木貴裕も不振で苦しんでいる。ベンチに欠かせない男であることは間違いないが、ここまで代打で10度起用されノーヒット。その真髄を発揮できていない。セ・リーグは指名打者制を用いていないこともあり、試合終盤に起用された代打の一振りで試合が決まるケースは少なくない。昨シーズン12球団最多となる18本の代打安打を放った男は必要不可欠だ。
そして故障で離脱した中村悠平だ。開幕一軍入りを果たし、高津監督が事前に発表した予告オーダーでも名前の入っていた中村は1試合も出場することなく、音沙汰がない。二軍でも試合に出場しておらず、復帰時期は明らかになっていない。
とはいえヤクルトは、山田哲が低調で代打の切り札も不振、そして正捕手が不在ながらここまで上位争いを繰り広げているのである。良い方向に捉えれば、上積みはまだまだある、ということだ。
残念なことに今シーズンのヤクルトは、各所で行われている開幕前の予想では最下位が多く、大半がBクラスの予想だった。それを覆す戦いぶりをこれからも見せてほしい。
※数字は2020年7月12日終了時点
【関連記事】
ヤクルト・清水昇の勝ちパターン定着を期待 セ・リーグ新監督の下で活躍の場を見出した選手たち②
サヨナラ本塁打の通算最多は誰?満塁本塁打ランキングも
プロ野球も黄金世代!躍進目覚ましい1998年度生まれの選手たち