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完全復活目指す巨人・菅野智之 オープン戦績から浮かび上がる課題とは

2020 4/16 11:00SPAIA編集部
読売ジャイアンツの菅野智之ⒸSPAIA
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ⒸSPAIA

チームは優勝も…不振に終わった菅野智之

昨年5年ぶりにリーグ制覇を果たした巨人。投手陣では、山口俊がセ・リーグの投手3冠に輝くなど、エース級の働きを見せていた。だが、その山口がポスティングによりメジャーリーグへ移籍。今季リーグ連覇を成し遂げるためには、先発陣の整備が至上命題となる。

その先発陣の中で一番の注目は、エース・菅野智之が復活できるかという点だろう。巨人のエース番号である18を受け継ぎ、史上初となる3年連続沢村賞を目指して臨んだ昨シーズン。しかし、自責点4以上が7試合、怪我による離脱を繰り返し、プロ入り後初めて規定投球回到達を逃すなど、菅野らしからぬシーズンとなってしまった。

年間を通して、持病である腰の状態が思わしくなかったのが原因だ。それでも最終的に11勝6敗、防御率3.89にまとめたのは、巨人のエースとしての意地だろう。

今年は復活をかけたシーズンとなる。大車輪の働きをした山口が抜けた以上、菅野には沢村賞を獲得した2017、2018年並みの成績が期待される。さもなければ、巨人のリーグ連覇、そして8年ぶりとなる日本一奪還は見えてこない。

軒並み成績が下降した2019年

実際、2019年の菅野の投球は、前年からどのように変化していたのだろうか。2018年、2019年の成績について、被打率、被OPS、奪三振率、四球率、HR/9の5項目を比較してみた。

2018年、2019年成績比較ⒸSPAIA

上表から全項目で数字が悪化していることがわかる。ちなみに、奪三振率以外の4項目はプロ入り後最低の数字だった。

では、球種別の成績はどうだろうか。前年と比較してみると、以下のようになった。

球種別成績ⒸSPAIA

投球割合はほぼ前年と変わっていないが、こちらも軒並み成績が低下している。特に、投球の半分を占めるストレートとスライダーの数値が大幅に悪化していた。

やはり昨年はケガの影響からか、満足のいく投球ができていなかったことが数字にも表れている。

だが、転んでもただでは起きないのが菅野という男。このシーズンオフから、思い切ったフォーム改造に取り組んでいる。ノーワインドアップから腕を先行させて投球動作に入る新フォームだ。

直球の質に不安も”新型菅野”の快投に期待

ここまでは、そのフォームに手応えを感じているようで、オープン戦でも4試合に登板し、17イニングで3失点、防御率1.59と好投を見せていた。

ただし、不安要素も垣間見えた。下表は近3年(2020年含む)のオープン戦におけるストレートの成績をまとめたものだ。

近3年OP戦のストレート成績ⒸSPAIA

球速は過去2年と比べ速くなっており、新フォームの効果が出ているように見える。その一方で、被打率と空振り率が昨年よりも悪化しているのは、オープン戦での数字とは言え、少し心配だ。

実際、3月6日のオープン戦では、オリックスのルーキー勝俣翔貴に、高めのストレートをスタンドまで運ばれている。本来の菅野のストレートであれば、空振りを奪っていてもおかしくない球だった。

菅野自身は新フォームについて前向きなコメントを残してはいるが、ストレートが本来の威力に戻っていないのは、やはり気がかりだ。

だが、菅野はこれまでも逆境を糧に、我々の予想を超える活躍を見せてきた。プロ入り前に浪人を経験し、目標が定まらない中での調整を余儀なくされるも、翌年ルーキーながら13勝を挙げ、不安を一掃した。

コロナウィルスの影響で開幕日が定まらず、調整の難しい日々が続いている現状も、当時の状況とどこか似ている部分がある。世界中が歴史的な大混乱に陥っている2020年。プロ野球界では、”新型菅野”が球史に残る快投を披露してくれるに違いない。