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日本ハムの鉄腕・宮西尚生 球速遅く球種少なくても長年活躍できる理由

2020 4/2 11:00浜田哲男
日本ハム・宮西尚生
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Ⓒゲッティイメージズ

球界を代表するセットアッパー

昨季はNPB史上初となる通算300ホールドを達成。プロ入りから12年連続となる50試合以上登板を果たすなど、今や球界を代表するセットアッパーとしての地位を確立した日本ハムの鉄腕・宮西尚生。緊迫した場面でマウンドに上がり、淡々と打者を打ち取る姿はまさに職人だ。

球速があるわけでも球種が多いわけでもない宮西が、なぜ長年にわたって活躍し続けられるのか。その理由に迫ってみる。

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変則フォームとスライダーの投げ分け

宮西の特長は変則的な投球フォーム。球界には左のサイドスローが何人か存在するが、中でも宮西の投球フォームは独特だ。腕の位置は下げ気味で球持ちが長く、深く体を沈み込ませた後にスパッと球を放す。

特に左打者にとっては球が背中から来る感覚となり、タイミングがとりにくい。また、左のサイドスローはワンポイントでの起用が多く見られるが、宮西の場合は、打者の左右関係なく抑えている。

球種は、投球割合の52.5%を占める直球と、46.6%を占めるスライダーの2種類。シンカーも投げるが0.9%と少ない。変則フォームで打ちにくいとは言え、なぜ少ない球種で打者を打ち取ることができるのか。

それは、宮西が数種類のスライダーを投げ分けているためだ。内角のボール球から外角いっぱいまで横に大きく変化させる場合もあれば、曲がり幅を小さくしたり、縦に変化させる場合もある。その日の自身のコンディションや打者の調子を把握した上で絶妙に投げ分ける。

元巨人でメジャーでも活躍した上原浩治も、球種は直球とフォークの2種類と少なかったが、フォークの球速や変化量を微妙に調整しながら投げていた。球種が少なくても長年活躍できた大きな理由だ。

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打ち取るパターンを確立

また、好投手は打ち取るパターンが確立されており、宮西も例外ではない。投手ヒートマップを見ると、左打者の場合は外角低めで、右打者の場合は内角低めで多くの空振りを奪っている。

ゾーン別データでは、左打者の外角低めへの投球割合は33.6%を占め、このゾーンで11個の奪三振。右打者の内角低めへの投球割合は23.5%を占め、このゾーンで15個の三振を奪っている。球が真ん中付近に集まることは少なく、リスクの少ない配球を徹底している。

直球の被打率は.190でスライダーは.181と、ともに優れた数値をマーク。昨季打たれた本塁打はわずか1本だった。さらに、得点圏被打率は.167。ここに投げておけば抑えられるというイメージがあるからこそ、走者を背負った場面でも落ち着いて投げられるのだろう。

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13年連続50試合登板なるか

今季のオープン戦では3試合に登板。打者11人に対して被安打2、無失点と順調な仕上がり。13年連続となる50試合登板に向けて視界良好だ。しかし、新型コロナウイルスの影響を受けて開幕が遅れており、日程がタイトになることが予想される。その分、50試合に登板することは例年より難しくなるかもしれない。

いつになく調整が難しくなるシーズンとなりそうだが、栗山英樹監督をはじめとした首脳陣とファンの宮西に対する信頼は揺るぎない。今季も緊迫した場面でマウンドに上がり、淡々と打者を打ち取る宮西の姿が見られるはずだ。

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