大田を4番に起用するなど試行錯誤
今も昔もチームで最も期待でき、長打力を備えた打者が座るポジションが4番。近年は、2番に強打者を置くなど各打順における概念というものも様々だが、やはり4番がしっかりと仕事をするチームは強い。
今回は日本ハムの4番に注目。長年にわたり4番を指定席としているのが中田翔だが、昨オフの契約更改時には大田泰示も4番への想いを明かしている。栗山英樹監督は開幕前の対外試合で、その想いをくみ取ったかのように何試合かで大田を4番に起用し、試行錯誤を重ねている。
「打順は何番でもやることは変わらない」「任せられた打順で仕事をするだけ」といった選手のコメントはよく耳にすると思うが、やはり4番を掴みにいくと公言する選手の意気込みは指揮官としても嬉しいかぎりだろう。
中田と大田を比較しつつ、4番を意識する選手が複数存在するチームのメリットを考察してみたい。
4番を外された刺激が中田の奮起に
大田は昨季、自身最多となる132試合に出場し、打率.289、20本塁打、77打点のキャリアハイの数字を残した。日本ハム移籍3年目で大台の年俸1億円(推定)に到達し、再びキャリアハイを目指して今季にかける意気込みも強いだろう。
一方、中田は昨季124試合に出場。打率.242、24本塁打、80打点をマーク。数字的には大田とそれほど変わらないが、得点圏打率が.219と精彩を欠き、同打率.294の大田に軍配が上がった。また、長打率も少しだが大田(.451)が中田(.449)を上回っている。表面的な数字をみれば、大田に4番を任せても遜色がないようにはみえる。
しかし、ここまでのオープン戦の成績(2020年3月4日終了時点)をみると、大田は10打数1安打(打率.100)と当たりが出ていないが、中田は18打数5安打(打率.278)で2本塁打とまずまずの数字。特に4番を大田に譲った2月19日の練習試合、対広島戦では4回にオープン戦第1号となる逆転2点本塁打を放つなど、存在感を示した。少なくとも4番の定位置を外された悔しさが、中田の力となったことは間違いないだろう。
2017年の第4回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では、4番を筒香嘉智(現レイズ)に譲る形となり5番に入った中田。当時指揮をとった小久保裕紀監督の思惑は当たり、中田はWBC史上日本初の3戦連続本塁打を放ち躍動した。それまでは全日本の4番としてなかなか結果が出ていなかった中田だったが、4番としての重圧から多少なりとも解放されたのか、頼れる5番打者として結果を出した。
こうした過去の事例も考慮すると、4番に安住していた中田に刺激を与えることは、日本ハム打線が好転する可能性を秘めていると言える。また、大田に対しても4番を経験させることで、さらなる成長を促せるという考え方もできるだろう。
4番大田・5番中田でスタートも一考
昨季の月別打率を見ると、大田は打撃の調子にそれほど波がない。打数が少なくあまり参考にならない3月以外(3試合出場)は、毎月.290前後の打率を残している。一方の中田は、波が上下するというよりも毎月.250前後に落ち着いてしまっており、かつシーズン後半の8月・9月の2ヶ月に関しては計1本塁打、12打点と失速した感は否めない。だが、7月には7本塁打18打点を上げるなど型にハマると強さを見せていた。
また、ゾーン別データをみると、大田は苦手としているコースが少ない。外角低めの打率こそ.193だが、外角高め.325、真ん中高め.317、内角高め.282と高めに滅法強く、内角中程も.321と上手くさばいている。中田はというと、外角高め、外角低め、内角低めが打率1割台と比較的穴が多いことが懸念点だ。
確率を重視し新しい4番として大田を試すのか、経験を重視してこれまで通り中田を4番に据えるのかは指揮官次第。だが、双方に刺激を与えるという意味では、4番大田、5番中田で開幕をスタートするのも一考かもしれない。
たまった走者を大田が安打で返し、残った走者を中田の長打で一掃する。そんな場面も見られるはずだ。いずれにせよ、4番を強く意識している中田と大田がどんな活躍を見せるのか。2人が日本ハム打線の鍵を握っていることは間違いない。
2020年プロ野球・北海道日本ハムファイターズ記事まとめ