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サイン盗みに揺れるアストロズの順位は?「ア・リーグ屈指の激戦区」西地区の順位予想

2020 3/5 11:00棗和貴
サイン盗み問題に揺れるアストロズⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ア・リーグ屈指の激戦区であり激震地

昨シーズンのア・リーグ西地区はアストロズが優勝。しかし、そんな話題は例のサイン盗み問題で吹き飛んでしまった。本当にアストロズは強いのか。不正があったから勝ってきたのではないか。多くの人間が今までの成績に疑問を持っていることだろう。

「選手主導の不正」アストロズ、サイン盗みの衝撃

今シーズンのア・リーグ西地区は、二つの意味で「荒れる」と予想できる。一つ目は、アストロズやアスレチックスはもちろん、レンジャース、エンゼルスもポストシーズンに進出できる戦力が整っており、激戦となってもおかしくないということ。そして、もう一点はサイン盗み絡みでこの地区が「激震地」になる可能性があるということだ。アストロズのバッターへの報復死球、騒動の発端となる告発を行ったマーク・ファイアーズ(現アスレチックス)はどうなるのか、注目が集まる。

そんなア・リーグ西地区について、各チームの戦力分析とともに今季の順位予想を行っていく。

【予想1位:アスレチックス】WマットとWショーンを見逃すな

アスレチックスを1位と予想するのは、なにもアストロズが憎いからというわけではない。今オフ、目立った補強をしなかったアスレチックスだが、2020年は昨シーズンより一層戦力が増すに違いないからだ。

2018年から25本も本塁打を減らしたクリス・デービスが復活し、身長2メートルの長身左腕A.J.パックや昨年のワイルドカードで3回無失点と好投したヘスス・ルザルドら若手がブレークすれば相当な戦力となるだろう。

現在、チームを牽引するのはマット・チャップマンとマット・オルソンの「二人のマット」である。昨季は二人とも36本塁打を放ち、シーズン97勝に貢献。80年代後半に活躍したホセ・カンセコとマーク・マグワイアのコンビ「バッシュ・ブラザーズ」の21世紀版とも評されている。

今シーズンはもう一つ、今度はバッテリーのコンビが結成されそうである。ショーン・マネイアとショーン・マーフィーの「二人のショーン」である。マネイアは2019年、怪我のため5試合しか登板できなかったが実力は十分。マーフィーは新人ながらOPS.899と大きな可能性を感じさせた。

【予想2位:アストロズ】それでもこのチームは強いが……

多くのMLBファンは、アストロズが下位に沈むことを望んでいるかもしれないが、このチームは強い。サイン盗みの恩恵を受けた打者は置いておくとして、投手陣は他のチームに比べて強固である。ただ、優勝ではなく2位と予想したのは、ゲリット・コールとウィル・ハリスという先発・リリーフの両エースが抜けた穴が大きいと考えているからだ。

2019年にコールが叩き出したfWAR(勝利貢献度)は投手最高の7.4、ナショナルズに移籍したハリスの2019年の防御率は68試合を投げて1.50と、なかなか替えがきかないだろう。また、監督だったA.J.ヒンチを解任した影響も大きいと予想する。

アストロズの外野手ジョシュ・レディックは、ワシントン・ポスト紙で「勝って、みんなを黙らせる」と発言した。確かに、この騒動を静まらせる方法はこれしかない。ただ、レディックのこの発言は、火に油を注ぐ形になってしまったが。

【予想3位:レンジャース】先発ローテーションはリーグでダントツ

レンジャースは、エンゼルスやマリナーズと違い日本人が在籍せず、アストロズやアスレチックスと違って最近はポストシーズンに出ていない。そのため、あまり注目されていないかもしれないが、この地区でもっとも不気味な存在なのがこのチームだ。

レンジャースの先発ローテーションは、地区最強と言っていい。今オフ、トレードで獲得したサイ・ヤング賞2度受賞のコーリー・クルーバーや、昨季は防御率3.59と好成績を収め、オールスターにも出場したマイク・マイナー、さらにランス・リンやボブ・ギブソンなど実力者が揃う。

レンジャースは今季から新球場グローバルライフ・フィールドで戦う。公式HPによると総工費は11億ドル(約1200億円)。開閉式の屋根は、MLBで初めて透明な素材を取り入れており「エアコンが効いたなかで、屋外の雰囲気を楽しめる」らしい。そう言った意味でも、今季のレンジャースは見ものである。

【予想4位:エンゼルス】鍵を握るのは、やはり大谷翔平

野手だけを見ると、エンゼルスにはかなりの魅力を感じる。

今オフはアンソニー・レンドーンを獲得し、日本でもおなじみのマイク・トラウトと大谷翔平の「トラウタニ」に新たなピースが加わることになるだろう。また、今季から指揮をとるジョー・マドン監督の実績も考えれば期待も高まる。

課題となるのはやはり投手力だ。シーズン10勝以上の経験を持つフリオ・テヘランやディラン・バンディを獲得したものの、昨季のチーム防御率は全30チーム中ワースト6位となる5.12。これでは十分な補強とは言いがたい。大谷翔平の二刀流復活が鍵となりそうだ。

【予想5位:マリナーズ】次なる“キング”は誰か

昨オフに多くの主力を放出し、完全にチーム再建に舵を切っているマリナーズ。そういった状況において、注目すべきは有望株の活躍となる。

昨季メジャーデビューを果たしたシェッド・ロングJr.やカイル・ルイス、チームのトップ有望株であるジャレッド・ケレニックがいる。もちろん、最大2025年まで契約を結んでいる菊池雄星にも大きな期待が寄せられているだろう。

2019年シーズンの開幕直後にイチローが引退し、シーズンオフには「キング」の愛称で親しまれ長年エースとして活躍したフェリックス・ヘルナンデスが移籍した。チームの象徴的なプレイヤーを失った今、次にマリナーズの中心として君臨するのは誰だろうか。