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メジャーリーグ歴代首位打者、吉田正尚のデータが示すタイトルを狙える理由

2023 8/1 06:00田村崇仁
吉田正尚,Ⓒゲッティイメージズ

Ⓒゲッティイメージズ

天性の広角打法、メジャー1年目で首位打者ならイチロー以来

米大リーグ、レッドソックスの吉田正尚が天性の広角打法でさまざまなデータが証明する適応力の高さを見せ、2001年のイチロー(マリナーズ)以来となるメジャー1年目で首位打者の快挙を視界に捉えている。

7月22日、ボストンで行われたメッツ戦では4打数3安打1打点と活躍し、打率3割1分9厘まで上げてア・リーグ首位打者に初めて浮上。オリックス時代から首位打者に2度輝き、WBCでも打点王で「侍ジャパン」の3度目の優勝に貢献した日本球界屈指のスラッガーは試行錯誤を重ねながら「進化」を続け、メジャーでもタイトルに手が届く可能性が膨らむ位置に付ける。

圧巻の内角捌き、ストライク6ゾーンで3割超の高打率

大リーグのプレー解析システム「スタットキャスト」(データは2023年7月31日現在)を見てみると、ストライクゾーンを9分割したうち、打率が3割を上回っているコースはどんな打者にも難しいとされる外角低めに加え、真ん中低めと真ん中高めを除く6ゾーン。特に4割4分4厘の外角高めを筆頭に、内角ベルト付近と内角高めが4割を超え、ど真ん中、内角低め、外角ベルト付近のゾーンで3割を超えている。

7月22日のメッツ戦では今季の吉田を象徴するような打撃があった。サイ・ヤング賞を3度受賞している現役屈指の右腕シャーザーから内角高めの速球を引き付けて振り抜き、逆方向に左前打。メジャーで活躍する数字が示す通り、圧巻の美しい内角捌きだった。

本塁打12本のコース別の内訳を見ても、内角ベルト付近を5本、真ん中を4本、外角高めを2本(ボールゾーン)、内角高めを1本と放っており、左右に打ち分ける技術でハードヒットできるゾーンが多いことをデータも証明している。

強打者の指標となるOPSは8割5分超

米大リーグで強打者の指標として重要視されているのが「OPS」。出塁率と長打率を足したもので数値が高いほど得点への貢献度が高いと評価され、7割で平均、8割台で優秀、9割以上だとトップレベルの強打者とされる。

「マッチョマン」の愛称で親しまれる吉田は7月31日時点で8割5分8厘。10割を超える大谷翔平(エンゼルス)に比べれば若干下回るが、オリックス時代からパンチ力と高いボールコンタクト能力を兼ね備え、選球眼に優れて三振も少なく、昨季自己最高の10割8厘をマークした持ち味を十分発揮しているといえるだろう。

対直球の打率はメジャーでもトップクラス

7月15日、大リーグ公式ツイッターは30歳の誕生日に合わせて吉田を祝福し「スタットキャスト」による対直球の打率上位5人を紹介。吉田は3割8分8厘とメジャー全体でトップだった。続くのはフリーマン(ドジャース)、アラエス(マーリンズ)、大谷翔平(エンゼルス)、マカチェン(パイレーツ)と並み居る強打者が並んだ。

吉田は日本からメジャー移籍の野手で最高額の5年総額9000万ドル(約126億円)で契約。WBCでは準決勝のメキシコ戦で起死回生の同点3ランを放ち、勝負強い打撃で大会新記録の13打点を挙げた。当初はメジャーでの活躍を疑問視する見方もあったが、そんな不安を払拭する適応力は目を見張るものがある。

活躍を支えるのは旺盛な研究心とメンタル面のタフさもある。打率3割5分で規定打席到達を目前にしていたシーガー(レンジャーズ)は負傷者リスト入り。警戒を強められる後半戦も厳しい戦いになるが、ライバル不在の間に着実に安打を積み重ねていけば、さらにタイトルのチャンスは広がりそうだ。

MLB歴代首位打者


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