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メジャーでノーヒットノーランが続出する理由、今季すでに6度の「異変」

2021 5/28 06:00田村崇仁
ヤンキースのコリー・クルバーⒸゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

2日以内に2度達成は31年ぶり、5月中に6度は史上最多

今季の米大リーグは4月の開幕から約2カ月でノーヒットノーランが続出する「異変」が起こっている。

5月19日にはヤンキースの先発右腕コリー・クルバー投手が敵地アーリントンで行われた古巣のレンジャーズ戦で早くもメジャー今季6人目の無安打無得点試合を達成。5月18日にタイガースの本格派右腕スペンサー・ターンブル投手が敵地シアトルで行われたマリナーズ戦で達成したのに続き、2日連続での快挙となった。

2日以内に2度の「ノーノー」が記録されたのは1990年6月以来、約31年ぶりで、5月中の6度目達成は史上最多。一方、マリナーズはこの試合で今季2度目のノーヒットノーランを許した。大リーグで1900年以降、ノーヒットノーランのシーズン最多記録は7回。前例のない「投高打低」シーズンの行方は波乱の予感も漂うが、その理由を探ってみた。

飛ばないボール採用で「投高打低」加速

今季の第1号はパドレスの右腕ジョー・マスグローブ投手。4月9日、アーリントンで行われたレンジャーズ戦で球団史上初のノーヒットノーランを達成した。レンジャーズ先発の有原航平投手との投げ合いで、死球による走者を1人出しただけで10三振を奪い、112球で投げ切った。

2人目はホワイトソックスの左腕カルロス・ロドン投手。4月14日、シカゴで行われたインディアンス戦で達成。オリオールズの左腕ジョン・ミーンズ投手が5月5日、シアトルでのマリナーズ戦で3人目となり、レッズの左腕ウェード・マイリー投手が5月7日、クリーブランドで行われたインディアンス戦で今季4人目の「ノーノー」を達成した。

5人目となったターンブルはメジャー通算わずか10勝と実績が少なく、2014、2017年にはサイ・ヤング賞(最優秀投手賞)を獲得したクルバーもこの2年間は負傷続きだった。他の投手も決して「超エリート」とはいえない実績だ。

それでも次々と快挙を達成しているのは、今季から採用した「飛ばないボール」により、投高打低が加速したことが大きいのは間違いないだろう。2019年は年間最多本塁打6776本が飛び交い、打撃スタイルも変化。これを受けてMLBはボールの内部構造を変えることで、大きさを変えずに最大2.8グラム軽くし、反発係数を減少させた。

歴史的低打率、本塁打数も減少傾向

この結果、メジャーの平均打率は5月26日現在、2割3分台で、2020年の2割4分5厘、2019年の2割5分2厘よりも悪化し、歴史的低打率となっている。

ESPNによると、今季は安打数、本塁打数とも1試合平均でそれぞれ7.87本、1.15本と大幅に減少傾向にある。「フライボール革命」で長距離打法と三振が量産された近年の傾向から明らかな変化が見て取れるデータだ。

専門家の分析によると、今季は反発係数の少ないボールを使用しているため、打球が375フィート(約114メートル)以上飛んだ場合、以前よりも1~2フィート(約30~60センチ)は飛ばなくなっている計算になるという。

投手は球速と多彩な変化球でレベルアップ

一方で投手は年々パワーアップして球速が上がり、今季5勝のダルビッシュ有(パドレス)に代表されるように多彩な変化球を操るタイプも増えているので、打者がヒットや本塁打を打つのも簡単ではない。

フォーシームの平均球速が93.6マイル(約151キロ)と上がっており、投手のレベルアップが顕著なデータもある。

例年のシーズンと比較すると、1試合平均の防御率は4.08、被安打7.87本、被本塁打1.15本で明らかな減少傾向。一方で奪三振数9.01は最多ペースである。序盤戦ながら、失点4.40、自責点3.99と2016年シーズン以降で最も低い数字だ。

カーショー投手はノーヒッター量産に警鐘

一方で今季の「異変」にドジャースのエース左腕、クレイトン・カーショー投手は地元メディアで警鐘を鳴らした。

本人も2014年に無安打無得点試合を達成している経験を踏まえ「ノーヒッターはクールなことだし、達成した選手には心から敬意を持っている。でも毎晩のようにノーヒッターが起きるのは、ベースボールにとって良いことじゃないかもしれない」と言及。「多くのファンが見たいのはヒットなど動きを伴うアクションで、打者が三振に倒れる様子ではない。MLBの新たな試みは理解するが、今のところ的が外れているように思える」とも指摘している。

7回制のダブルヘッダーのため公式記録としてカウントされていないが、4月25日のマディソン・バムガーナー投手(ダイヤモンドバックス)も含めれば、今季は7回の無安打無得点が生まれたことにもなる。低打率傾向には「フライボール革命」の波に乗った三振増だけでなく、近年の極端な守備シフトの影響を指摘する声も出ている。

そんな中、開幕から投打の「二刀流」で大活躍を続けているエンゼルスの大谷翔平は5月26日現在で15本累打と量産し、パワー全盛時代の大リーグで堂々たる本塁打王争いを繰り広げているのは特筆に値するだろう。 投手としてもローテーションを守って真価を発揮しており、無安打無得点試合の快挙を達成する日が来ることも、そう遠くないかもしれない。

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