巨人時代に3軍落ちも、今やレッドソックスの貴重なセットアッパー
レッドソックスの澤村拓一が、現在チームに欠かせないセットアッパーとしてフル稼働している。移籍当初は点差が開いた試合での登板が多かったが、今では僅差での登板が増えており、指揮官からの信頼も厚い。
澤村は2020年シーズン、巨人で13試合に登板し防御率は6.08と振るわず3軍落ちを経験。しかし同年9月にトレードでロッテへ移籍すると、22試合で防御率1.71と3軍にいた選手とは思えないほどの活躍を見せた。ロッテへの移籍によって澤村の野球人生が大きく変わったと言えるだろう。
レッドソックス移籍後も勢いは衰えず、7月2日現在、30試合登板で4勝0敗、防御率2.56とメジャーでも力を発揮。今後どこまで活躍を見せてくれるか、目が離せない投手の一人だ。
強靭な肉体が成せるフォーム
澤村の活躍を支える根本的な要因が投球フォームの中に隠されている。
まず骨盤のスライドが大きいところだ。骨盤は軸足から前足への体重移動によって動くが、澤村の場合ステップ幅が広く、骨盤もしっかり前足股関節へと乗せることができている。そのため、ボールに十分なエネルギーを伝えられているのだ。巨人時代から唯一変わっていないポイントであり、速い球の源は広いステップ幅を最大限使えている部分にある。
2つめは、グラブの使い方が上手な点。巨人時代は投球時のグラブの位置が低く、球速への意識が強い余りに力で投げている印象があった。ロッテ移籍後から現在は、グラブで体の開きを抑えてグラブを抱え込むような形で投げられている。体の使い方の工夫が、今の澤村を支えていると言っても過言ではないだろう。
3つめは、胸の張りが強いところだ。胸をしっかり張れていると、腕が遅れて出てくるためしなりを効かすことが可能。澤村も腕のしなりが強く、リリース時に強くボールを押し込むことができている。
唯一気になる部分があるとすれば、左足をステップする際に右肩が背中に深く入る点である。肩が背中に入りすぎると、右腕の出てくるタイミングが遅くなり手投げになりやすくなる。手投げは肩肘を痛めるリスクが上昇し、球威も落ちるためオススメの投げ方とは言えない。また上半身のブレが大きくなるため、コントロールが悪くなるデメリットもある。
澤村の場合、現時点では右肩が背中に強く入っても左足着地時点では肘が上がっているため、強いボールを投げられている。しかしコントロールにバラつきがあるのは、背中に入りすぎているところが原因かもしれない。
巨人入団後1年目は、肩が背中に入ることなくスムーズな投球ができていた。しかし年が経つごとに肩が背中に入るようになり、コントロールも悪くなった印象だ。
今では荒れ球が良い効果を発揮しているが、今後さらにコントロールが悪化し、肩肘を痛めることがあれば改善を試みた方が良いだろう。
フォーシームとスプリットが今後の生命線
澤村の投球の大半はフォーシームとスプリットで成り立っている。最速159km/hのフォーシームと最速152km/hのスプリットが武器であり、球速差が小さいためフォーシームとスプリットの見分けがつきにくい。
かつてレッドソックスでワールドシリーズ制覇に貢献した上原浩治とスタイルが似ている。球速自体は速くはないものの、フォーシームとスプリットの見分けがつかないのを武器として、メジャーの打者を翻弄してきた。
上原と同等か、それ以上の活躍を球団から期待されていることは間違いないだろう。今後も澤村の活躍に目が離せない。
【関連記事】
・大谷翔平はMLB史上6度目の快挙なるか、単打より本塁打が多かった日米の打者は?
・エンゼルス・大谷翔平、ノーステップでも規格外な飛距離が生まれる理由
・サイヤング賞候補のダルビッシュ有、安定した投球の秘訣をフォームから解説