こいつが野球を辞めなかったらどうなってたんやろ?
金島弘樹(以下、金島):大学やプロにいたときよりも高校時代のほうが思い出とか色褪せないもの?
背尾匡徳(以下、背尾):僕はやっぱり高校野球が一番アツいなと思いますね。やっぱり野球の熱が違うんですよ。1回負けると終わりですし、そこには色んな思いやドラマがあるわけで。プロはまた違うかもしれないですけど、さっきかみじょうさんが仰ってたように多くの子が甲子園を目指すから、やっぱりその熱はすごいですよね。高校野球やってなかったら道外してたかもしれんっていう人間も結構いると思うんですよ。
ダース・ローマシュ匡(以下、ダース):ああ、そうですね。逆に、こいつが野球を辞めなかったらどうなってたんやろ?っていうのもありますね。
一同:そうそう!あるある!
ダース:めっちゃいたんですよ、凄いやつが。でもいろいろな事情で辞めてった。
背尾:中学の同級生でジャパンのエースが大阪桐蔭いったんですよ。でも先輩の指導が厳しくて、寮飛び出したんですよ、1年で。そいつが3年間やってたらどうなってたんだろうって思いますね。高校野球はそういうキャラがいることも背景として面白いですよね。
かみじょうたけし(以下、かみじょう):中学でエースでちやほやされてても、高校入ったときには関係なく1年生じゃないですか。一番下で使われるのが、なんで俺が?ってなる。さらに先輩に無抵抗で思いっきり殴られてとか。なんでこんなとこおらなアカンねんってなるんでしょうね。
ダース:平安って上下関係どうだったんですか?
背尾:いや、ヤバかったですよ。いまは共学だけど当時は男子校で、僕入ってから3ヶ月で15kg痩せましたよ。メンタルやられすぎて。先輩が全員めっちゃめちゃ怖かったですよ。
金島:79年世代はややこしい奴多かったからね。俺、79年代だけど。笑

夏の甲子園で負けたらかに道楽
かみじょう:僕はそんとき龍谷大学で大学生やってましたね。川口知哉投手(平安高校)が3年生の時に、大宮学舎あるでしょ、あそこの中をわざわざ通って行くんですよ。女子大生に凄い人気あったじゃないですか。女子大生が「川口君、写真撮って」と寄ってきたら「あぁ、エエよ」って調子乗っとったな。笑
通らんでエエやろ!たかが高校生が調子に乗りやがって!俺はただの甲子園ファンやけど!って思ってましたね。笑
背尾:平安の野球部ってあの周りを走るんですよ。本願寺の外周。1周が確か1.5kmくらいあるんですよ。本球場は亀岡にあったんですが、冬は霜が降りて使えなくなるのでその期間は学校のグラウンド練習になるんです。そこで出てくるのが本願寺。冬のトレーニングで5周タイム切りとかするからめっちゃ嫌いでした。しかも練習でミスとかすると(本願寺の外周を)走っとけって言われたり。。。
1日練習の土日とかでミスしてしまうと、1日中本願寺の周りをずっと走るわけです。今では笑い話ですが、同級生の投手が午前中の練習でミスをしてしまって走りに行ってたんです。でそのまま練習が終わってクラブハウスでみんなで談笑してる時に「そういえばあいつどこ行った?」ってなった事がある。夕方17時くらいになって後輩が探しにいったら本願寺を走ってたんですよ、真面目に。おまえ真面目に走ってたんか?何周走ったん?って聞いたら「48周」言うてました(笑)1周が1.5kmですよ。
かみじょう:50km余裕で超えてますね。
背尾:ちょっとだけ歩いた言うてましたけど。あそこまた人が多いじゃないですか。だから平安の野球部はサボったらすぐチクられるんですよ。だから力抜けないんでうまいことなってますよね(笑)
かみじょう:学校の前にビリヤード屋があって、たまに野球部かな?って子はいましたけどね。平安だったのかな。
金島:夏の大会で負けた地方の子らって絶対、かに道楽周辺にいますよね。
かみじょう:髪の毛ちょっと伸びた坊主がおるおる!
金島:道頓堀に行きよんねん。
かみじょう:だいたい引退した子らはパン屋の工場のおっちゃんみたいな帽子かぶってね、スポーツのTシャツにホワイトジーンズ、ごっつ長財布にチェーンつけてネックレスつけて。だいたい野球部っすね。笑
ダース:大阪道頓堀、兵庫三宮です。心斎橋派もいますね。笑
金島:よう見るわ、毎年おるわ、ほんまに!

第100回全国高校野球選手権大会に臨む球児たちへ
背尾:最後に、高校球児へのメッセージってありますか?
ダース:大阪桐蔭がすごい注目されているんで、自分のことばっかり考えてやって欲しいな。なにが一番かって目立って注目される事って人生にどれだけあるかわからない。
僕らの時も、鹿児島工業に今吉っていう代打がいたんです。出てきてシャーって声出すだけなんですけど、丸坊主でスキンヘッドですごく迫力があった。企業も欲しがるじゃないですか、ああいう人。それが10年経っても、あの時の!って話になるから目立って欲しいなって思います。
金島:面白い考え方やね。
ダース:活躍せんでも目立てるように。そこが、何かあったときに野球じゃなくても生きていける力にもつながるんじゃないかと。
金島:ブルース・リーみたいな感じでバッターボックス入る奴いたやんか。You Tubeでずっと出てたね。
かみじょう:甲子園にも出てなかったけど埼玉県大会の子ですよね?面白いって拡散されてましたけど。
ダース:他にも、浦安南高校の子とか。たぶん、野球部の人数が足りなくて助っ人で来ていたんだと思うんですよ。ルールとかもあんまりわからない中、奇跡的にヒット打って、セカンド駆け抜ける動画が良かったですね。
背尾:駆け抜けてタッチアウトで終わるやつですね。笑
かみじょう:もはや野球部でもないけど人数足らんからみたいなので出て。甲子園まで出たダースさんがそれを覚えてるって、形違えど目立つことがどれだけ凄いかって事ですよね。
ダース:でも彼は逆に僕のこと知らないと思います。野球やってないから。笑
背尾:ダースっていったらチョコレートって言われるかもしらんな。笑
かみじょう:たまに帰宅部の子が地方大会でホームラン打ったりと、嘘みたいな事もありますよね。そんなのみてるのも面白いですけどね。
背尾:かみじょうさんもメッセージお願いします。
かみじょう:今年は100回記念大会なんで僕は悔いの残らないような、2年半やりきった事をぶつけてもらいたいなと。甲子園出場とかじゃなく、一緒に闘う仲間と完全燃焼して欲しいなって思いますね。
背尾:金島さんもお願いします。
金島:もちろんレギュラーの選手は一生懸命やるのかなと思いますが、僕がそうでなかったので野球だけじゃないよ、と伝えたいですね。これから人生長いから敵味方関係なく一生懸命応援して、仲間と絆を深めていい社会人生活に向けての足がかりにして欲しいなと思います。
背尾:僕はスポーツの仕事をしているんで余計に思いますが、最近の日本は自然災害とかも多く悲しいニュースもありますが、スポーツと音楽ってそういうときこそ真骨頂を発揮するなと思ってるんですよね。世の中が暗くなっても、沈んでいてもスポーツや音楽は観る人・聴く人に元気を与える事ができる素晴らしいコンテンツだと思うんです。
そういった意味で言わせてもらうと今年の夏の高校野球は記念すべき100回目。どう頑張っても今高校野球をしている選手にしか経験できない事なんで、勝敗ももちろん大事だけど、とにかくその場を楽しく、思う存分プレイして欲しいなって思います。それが大人になったときのいい経験となって「よかったよな、あの大会出れて」って言ってもらえればそれでいいんじゃないかと思いますし、必ず将来に役立つと思うので頑張ってください。
