二部制拡大、ユニフォームの色変更など対策も…
各地で気温40度を超えるニュースが続出している今夏、高校球児がプレーする甲子園でも熱さ対策が実施されている。昨夏から導入された朝夕の二部制を3日から6日に拡大。午前に行われる試合が午後1時半を過ぎた場合は新しいイニングに入らず、午後1時45分を過ぎた場合はイニングの途中でも「継続試合」として翌日以降に再開される。
大会2日目(6日)第2試合で行われた開星と宮崎商の試合は延長タイブレークの熱戦となり、午後1時半を過ぎていたが、延長10回裏に開星がサヨナラ勝ちしてギリギリで継続試合にはならなかった。
暑さのピークとなる時間帯を避け、第3試合は午後4時15分にプレーボール。第4試合は予定通りでもプロ野球より遅い午後6時45分開始だ。選手たちにとっては、比較的暑さがマシな時間に聖地でナイターを経験できるのは貴重だろう。
また、試合前ノックも従来の7分から5分に短縮され、行うかどうかは各校が選択できるようになった。大会本部だけでなく各校も工夫しており、北海や県岐阜商、広陵などは帽子やアンダーシャツを黒っぽい色から白色に変更し、少しでも選手たちが暑さに苦しまないように対策を施している。
しかし、それでも6日の第1試合に登場した仙台育英の川尻結大は試合中に自力で歩けなくなって交代。第2試合では開星の小村拓矢が8回の打席で足を痛がり、担架で退場した。いずれも重症ではないものの、熱中症の疑いがあったという。
今年のような酷暑が今後も続くようなら、開催時期の変更や一部ドーム球場への移行なども検討する必要があるのではないか。
同じ日にボクサー2人が開頭手術
暑さとは関係ないが、ボクシング界でも事故が相次いだ。2日に後楽園ホールで行われた東洋太平洋スーパーフェザー級タイトルマッチで引き分けた神足茂利と、日本ライト級挑戦者決定戦で8回TKO負けした浦川大将が試合後、東京都内の病院に救急搬送。2人とも急性硬膜下血腫と診断され、緊急の開頭手術を受けた。
5月24日にはIBF世界ミニマム級王座に挑んだ重岡銀次朗が12回判定負けした試合後に意識を失い、大阪市内の病院に救急搬送。右硬膜下血腫により開頭手術を受けた。
日本ボクシングコミッション(JBC)は、事務局を管轄する東洋太平洋ボクシング連盟のタイトルマッチを現行の12回戦から10回戦へ変更する方向。かつて15回戦だった世界タイトルマッチも事故防止のため12回戦に短縮されたが、東洋太平洋タイトルマッチも短縮されることになりそうだ。
かねてよりボクシング界ではリング禍を防ぐための取り組みを行ってきたが、重岡も神足も12回を戦い切ったため判断を難しくした。ダウンしたり、明確なダメージがあればレフェリーも判断しやすいが、ボクサーは試合中にいくらパンチをもらっても気力で戦おうとするため、最終回終了ゴングが鳴るまで立ち続けている場合、レフェリーが止める判断をすることは難しい。
以前に比べれば、レフェリーがストップするタイミングは早くなったが、それでも事故は起こるのだ。人間の判断だけでなく、ラウンド数の縮小などルール自体を変更する以外に対策の施しようがないのが実情だろう。
観る側も意識改革を
スポーツは健康な肉体と選手の安全が担保されて成り立つことは言うまでもない。事故のリスクをゼロにはできなくても、可能な限り小さくしていかないと競技の発展自体に関わる深刻な問題となる。
ルール変更があると、必ず競技の魅力を損なうという反対意見が出る。高校野球の延長が18回から15回になった時、タイブレーク制が導入された時、白熱の大接戦を期待するファンからの異論は少なからずあった。
ボクシングでも早すぎるレフェリーストップは、派手な倒し合いを期待するファンから好評とは言えない。止められた選手が不満を口にすることも少なくない。
しかし、選手の安全以上に重視されるべきことは何ひとつない。大切なのは観る側の意識だ。そして、「血染めの投球」などとケガを美談として報じるスポーツマスコミも襟を正す必要がある。
スポーツには嘘がない。だからこそ、観る人の胸を打ち、感動のドラマが起きる。それは「安全」の上に成り立っていることを決して忘れてはならない。
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