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花巻東の夢またも甲子園に散る…大谷翔平でも果たせなかった全国制覇はお預け

高校時代の大谷翔平,Ⓒゲッティイメージズ
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Ⓒゲッティイメージズ

ノーアーチで甲子園を去った佐々木麟太郎

第105回全国高等学校野球選手権記念大会に出場していた岩手代表の花巻東が準々決勝で仙台育英(宮城)に4-9で敗れた。

19日に行われた第4試合。照り付ける太陽が少しずつ傾き、一塁側の照明塔の陰が三塁側に向かって外野の芝生に大きく伸びた。それは、まるで一塁側の仙台育英が花巻東を圧倒する試合展開と重なるようだった。

仙台育英は3回、4回に4点ずつを奪い、7回にも1点を追加。注目された東北対決は意外なワンサイドゲームとなる。

0-9と大勢が決した中で迎えた9回裏、花巻東が最後の意地を見せた。先頭の4番・北條慎治が四球で出塁すると怒涛の3連打などで猛反撃。3塁側のアルプスだけでなく、最後まで甲子園に残った熱心なファンが360度から手拍子で押せ押せムードを演出し、仙台育英の左腕・田中優飛にプレッシャーをかける。

花巻東ベンチでは感極まって泣きながら声援を送る選手もいる中、高校通算140本塁打の3番・佐々木麟太郎はバッティンググローブをはめ、バットを握りしめながら打順が回ってくることを祈っていた。

その後も後続の打者が執念でつなぎ、2死を取られながら4点を返してついにこの回9人目の打者となる佐々木麟太郎が打席へ。大会注目のスラッガーは甲子園に来てから計6安打を放っていたものの、この日は無安打。仲間が必死につないで作った大チャンスに燃えないはずがなかった。

しかし、結果は一、二塁間を抜けそうなセカンドゴロ。微妙なタイミングで一塁へヘッドスライディングした佐々木は両手を広げてセーフをアピールしたが、塁審の右手は残酷にもアウトを告げた。

1回戦で宇部鴻城(山口)を4-1、2回戦でクラーク国際(北北海道)を2-1、3回戦で智弁学園(奈良)を5-2で下した花巻東の熱い夏は終了。史上最多のアーチを架けたスラッガーは、最後の甲子園で16打数6安打の打率.375をマークしたもののノーアーチのまま聖地を去った。

ユニフォームに染み込む悔し涙が伝統を作る

近年、躍進目覚ましい岩手県勢を引っ張っているのが花巻東だ。菊池雄星(現ブルージェイズ)を擁してセンバツ準優勝したのが2009年。同年夏は準決勝で、堂林翔太(現広島)を擁して優勝した中京大中京(愛知)に敗れた。

大谷翔平(現エンゼルス)が唯一の甲子園出場を果たした2012年センバツは初戦で大阪桐蔭に敗退。藤浪晋太郎(現オリオールズ)から本塁打を放ったものの試合は2-9で完敗し、大阪桐蔭は春夏連覇を果たした。

2015年夏も3回戦で、準優勝した仙台育英に3-4で敗退。2018年センバツでは準々決勝で、同年に2度目の春夏連覇を達成する大阪桐蔭に敗れた。

そして今年…。花巻東の前にはいつも強敵が出現し、全国トップレベルの実力を見せつけていく。

しかし、先輩が流した悔し涙は確実に受け継がれ、それが染み込んだユニフォームが伝統を作っていくのは間違いない。菊池雄星でも、大谷翔平でも、佐々木麟太郎でも成し遂げられなかった全国制覇は、いつかきっと後輩たちがつかみ取るだろう。

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